イスラエル新世代ピアノトリオ Shalosh、圧巻の物語展開の新譜

Shalosh - Broken Balance

イスラエルの新世代ピアノトリオ Shalosh新譜『Broken Balance

イスラエルの新世代ピアノトリオ、シャローシュ(Shalosh)が前作『Onwards and Upwards』(2019年)に続き名門ACTレーベルから新作をリリース!『Broken Balance』と名付けられた今作も独特の感性でストーリー性に富んだジャズを繰り広げている。

e.s.t や The Bad Plus の後継とも評される彼らのサウンドはいつも新鮮だ。オリジナル曲のタイトルも、例えば(1)「The Orphan Boy Who Wanted to Be a King(王様になりたかった孤児の少年)」や(4)「David Bowie Contemplating Art and Death in a Café in Berlin(ベルリンのカフェで芸術と死を熟考するデヴィッド・ボウイ)」といったように、曲への関心を引き立てさせる。楽曲の構成にもストーリー性があり、叙情的で感傷的なシーン、抑えきれない感情の昂り、さらには怒りや破壊といったものも言葉を持たない音楽ながら雄弁に語られる。
(10)「Party on a Powder Keg(火薬樽でのパーティ)」はイスラエルの不安定な政治情勢を表したものだ。この物語の構築力こそが、Shaloshというバンドの魅力なのだろう。

(4)「Nina」のMV。

今作は全10曲中、9曲がトリオのオリジナルで、曲名から連想するストーリーの妄想が捗りそうな楽曲展開力に痺れる。
残りの1曲は彼らの特徴でもある他ジャンルからの大胆なカヴァーで、今回はカート・コバーン作曲、ニルヴァーナ(Nirvana)の名盤『Nevermind』収録の楽曲「Breed」が取り上げられている。イントロではベースにかました暴力的なディストーション(歪み)が注意を強く引く。

(8)「Breed」はニルヴァーナの楽曲。
この動画はサワリの20秒だけなので、アルバムで聴いてみて。

日本を代表する書家、祥洲がジャケットデザインを担当

印象的なジャケットデザインはNHK大河ドラマの題字などの実績を誇る京都の先進的な書家、祥洲しょうしゅう(Shoshu, 福田祥洲)の筆によるもので、ACTレーベルのCEOであるシギ・ロッホ(Siggi Loch)との縁により実現したものとのこと。
アルバムタイトルを象徴するような、文字とも記号とも絵ともつかない、何かでありそうで何者でもない、奇妙なバランスの書が恐ろしくも美しくもある。

Shalosh (Gadi Stern Trio) :
Gadi Stern – piano, rhodes, micro korg
David Michaeli – bass
Matan Assayag – drums

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