アメリカを巡る魂のサックスと歌。ジョシュア・レッドマン初のヴォーカル・プロジェクト!

Joshua Redman - Where Are We

ジョシュア・レッドマン初のヴォーカル・プロジェクト

米国のジャズ・サクソフォン奏者ジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)の新作『Where Are We』は、長いキャリアを持つ彼がコロナ禍の中で構想した、初のヴォーカリストをフィーチュアした作品となっている。これまではワーナー・ブラザースやノンサッチから作品をリリースしてきた彼にとて初めてのブルーノート・レコードからのリリースだ。

テーマはアメリカ各地の街。全土をめぐる音楽の旅路の中で、彼は単なる母国への賛美ではなく、愛を持った批評の眼差しを向ける。アルバムは今作中唯一のジョシュアのオリジナル曲(1)「After Minneapolis」で幕を開ける。舞台となるミネソタ州ミネアポリスはBLM(Black Lives Matter)運動の発端となった街だ。そこから燃え上がった人々の怒りの炎はすぐにアメリカ全土に広がり、世界へも波及し人権運動の象徴となったことは記憶に新しい。ここでは冒頭1分間のテナーサックスのソロがすべてを物語る。あらゆる感情を詰め込んだ畏敬の念すら抱かせる演奏。それからそっと寄り添うようにアーロン・パークス(Aaron Parks)によるピアノの和音が添えられ、ガブリエル・カヴァッサ(Gabrielle Cavassa)が誰に問うでもない歌を歌う。第二節の直後に突如として挿入される不穏な和音とリズム。テナーサックスのソロは虚空へと向かい、第三節では歌とサックスが絡み合うようにしてクライマックスを迎える。
これは現代最高峰の“ブルース”ではないだろうか…

アルバムには全編で参加するジョー・サンダース(Joe Sanders, b)、ブライアン・ブレイド(Brian Blade, ds)の強力なリズム隊のほか、ブルース・スプリングスティーン作の(2)「Streets Of Philadelphia」にギターのカート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)、続く(3)「Chicago Blues」にはヴィブラフォンのジョエル・ロス(Joel Ross)といった最高峰のミュージシャンがゲスト参加。

(3)「Chicago Blues」のライヴ演奏動画

タイトルのWhere are we、“我々はどこにいるのか”という単純明快だが答えのない問いを投げかける本作。コンセプチュアルなスタンダード曲集であると同時に、アメリカが抱えるあらゆる側面へのトリビュート・アルバムだ。

Joshua Redman 略歴

ジョシュア・レッドマンは1969年カリフォルニア州バークレー生まれのサックス奏者/作曲家。父親は同じくジャズ・サックス奏者のデューイ・レッドマン(Dewey Redman)。ただし、彼の少年時代には父デューイが家にいたことは少なく、父親との関係は決して深くはなかったようだ。
幼少期から様々な楽器に触れ、9歳でクラリネットを始め、1年後にその後の人生のメイン楽器となるテナーサックスに転向した。サックスはほぼ独学だといい、影響源としてジョン・コルトレーンやオーネット・コールマン、キャノンボール・アダレイ、そして父親のデューイ・レッドマンらの名前を挙げている。そのほかビートルズ、アレサ・フランクリン、テンプテーションズ、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、プリンス、ポリス、レッド・ツェッペリンなども彼に影響を与えた。

1991年のセロニアス・モンク・コンペティションで優勝し、それを機にワーナー・ブラサースと契約したが当初父親のデューイは息子がプロになることに反対していたという。1993年の2ndアルバム『Wish』では父デューイゆかりのミュージシャンであるパット・メセニー、チャーリー・ヘイデン、ビリー・ヒギンスをサイドに迎え注目を集めた。

30年以上のキャリアのなかで、これまでにグラミー賞11度のノミネートを誇る現代最高峰のサックス奏者だ。

Gabrielle Cavassa 略歴

1994年にカリフォルニア州サンディエゴに生まれたガブリエル・カヴァッサ(通称:ギャビ・カヴァッサ)は、イタリア系のアメリカ人歌手/作曲家/ギタリスト。2019年のサラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンクールで優勝し、デビューアルバム『Gabrielle Cavassa』(2020年)をリリースした新進気鋭の音楽家だ。

幼少期からアルバムを“夢中になって聴いていた”というカヴァッサの表現には、ビリー・ホリデイ、フィリス・ハイマン、オルネラ・ヴァノーニ、フランク・オーシャンなど幅広い影響が反映されている。

今作では(13)「Where Are You?」でギターの演奏も披露している。

Joshua Redman – tenor saxophone
Gabrielle Cavassa – vocals, guitar (13)
Aaron Parks – piano
Joe Sanders – bass
Brian Blade – drums

Guests :
Kurt Rosenwinkel – guitar (2)
Joel Ross – vibraphone (3)
Nicholas Payton – trumpet (6)
Peter Bernstein – guitar (7)

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