カーボベルデの歌姫Lura、伝統と革新の新譜『MULTICOLOR』
カーボベルデの両親のもと、ポルトガル・リスボンに生まれたシンガーソングライター、ルーラ(Lura)。モルナやフナナ、バトゥーキといったカーボベルデの伝統音楽をベースにした彼女の音楽は同国の伝説的歌手の後継と期待され“ポスト・セザリア・エヴォラ”と称賛されてきたが、2023年の新作『MULTICOLOR』ではそうした伝統音楽のソダーデ(郷愁)を感じさせるエッセンスを残しつつ、現代的なサウンドへと進化を遂げた最先端のカーボベルデ音楽を聴かせてくれるものに仕上がっている。
ルーラの音楽にはカーボヴェルデだけではなく、西アフリカの音楽、ポルトガルのファド、ソウルやR&B、ジャズといったアメリカの黒人音楽、さらにはブラジル音楽など様々な影響がさりげなく感じられる。打ち込みや録音後の編集も多いハイブリッドなサウンドで、従来のモルナとは一線を画したものとなっているが、同郷のマイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade)の『Manga』(2019年)の流れを汲んだ新しいカーボベルデ音楽の象徴のような魅力を湛える。
(3)「Bem Bu Kolá」は今作中でもっとも印象的な、アフリカらしさをアップデートする素晴らしい楽曲だ。望郷の想いと未来への希望が入り混じったような絶妙な感情を呼び覚ます。
(8)「Cetam」にはベナン出身のSSWアンジェリーク・キジョー(Angelique Kidjo)がゲスト参加。アフリカ大陸の代表として東京オリンピックの開会式で「イマジン」を歌ったことも記憶に新しい彼女の自然体の歌唱は今作に大きく美しい華を添えている。