ジャズの現在と未来を思い描く。『ゼルダ』メドレーが話題となったマウリシオ・モラレスの新譜

Mauricio Morales - The Endless Ride

ベース奏者/作曲家マウリシオ・モラレス『The Endless Ride』

メキシコ出身のベーシスト/作編曲家、マウリシオ・モラレス(Mauricio Morales)が多数のゲスト・ヴォーカリストを招いて初のヴォーカル・アルバム『The Endless Ride』をリリースした。デビュー作『Luna』が子ども時代の回想のノスタルジーに溢れた作品だとすれば、今作は数多の才能との出会いを経て加速度的に進化する音楽家としての自身の現在の姿、といえそうだ。

ストリングスのパートも巧みに組み込んだ中規模編成でのアレンジは今作でも健在。間奏曲を除き全ての楽曲に異なる個性豊かなシンガーがクレジットされており、いずれも若手のホープであるため現代ジャズ・シーンの活気や、未来の音楽への漠然とした期待感を抱かせる内容であることも強い印象を残す。

テクニカルで美しいメロディの(1)「The Storm」には女性ヴォーカリストのインディア・カーニー(India Carney)と、サックス奏者デヴィッド・ビニー(David Binney)が参加。アート・ロックの要素を強めた今作の象徴的なオープニングとなっている。

MC/打楽器奏者として活躍するマイク・ホールデン(Mic Holden)とピアニストのアダム・ハーシュ(Adam Hersh)を迎えた(2)「Unbreakable」はラップを取り入れてはいるものの、バックの洗練されたアンサンブルはヒップホップの範疇に留まらない聴きごたえのあるアレンジとなっている。

(3)「Shine」では男性シンガーのマシュー・グラント(Matthew Grant)がフィーチュアされている。

(4)「Los Pajaritos」で個性的な歌声を聴かせるのはスペイン出身のマリーナ・トゥゼット(Marina Tuset)。今作中唯一のスペイン語詩だ。
(5)にはカナダ出身の男性シンガー、マーク・ペリ(Mark Pelli)とトランペット奏者ジョシュ・シュパク(Josh Shpak)が参加している。

(5)「Grey」。大部分がAIで生成されたと思しきMVは不気味だ。

韓国出身の女性シンガー、ソン・イ・ジョン(Song Yi Jeon)が(7)「The Endless Ride」に参加。

(9)「Tower In The Sky」のMVには緑色の服に身を包んだ少年が登場するが、これはデビュー作『Luna』のジャケットにも描かれるなど彼の作品に繰り返し登場する象徴的なキャラクターだ。これは幼少期の彼のために母親が作ってくれたお気に入りの衣装がモチーフとなっている。その元ネタはピーターパンか、ロビンフッドか、はたまたスナフキンか。

ジョセフィーナ(Josefina)が歌う(9)「Tower In The Sky」

Mauricio Morales プロフィール

メキシコシティ生まれのベーシスト/作編曲家マウリシオ・モラレスは、米国ボストンのバークリー音楽院で学んだあと、2019年に拠点をロサンゼルスに移し活動中。
2021年のデビュー作『Luna』では卓越した技巧とバランス感覚で、ひとつの壮大な音楽物語のような作品を作り上げている。

2018年にYouTubeにアップされた『ゼルダの伝説』の曲のメドレーは日本のSNSでも「レベルが高すぎるゼルダ」などとちょっとした話題となった。

マウリシオ・モラレスがアレンジし、バークリーの友人たちと録音した『ゼルダの伝説』メドレー。

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