ヨハネスブルグ・ソウェト生まれの職人気質のギタリストのデビュー作
南アフリカのギタリスト、ンコシ・ゾンド（Nkosi Zondo）のソロデビュー作『Bophelo Batho Pele』は、どこまでも素直で寛大で、愛の塊のような音楽だ。1986年に南アフリカ最大のタウンシップ[※]であるヨハネスブルグ市ソウェトの貧しい家庭に生まれた彼は2006年にファンダ・コミュニティ・カレッジ（Funda Community College）を卒業後、長い間、セッション・ミュージシャンとしてそれほど目立たずに活動してきた。南アフリカの人気シンガーソングライター、サムシング・ソウェト（Samthing Soweto）のバックバンドのリードギタリストとして知られているが、作編曲家、プロデューサー、ディレクターとしての顔ももつ。
※タウンシップ…アパルトヘイト時代の黒人専用居住区のこと。
バンドはギターの他に、鍵盤、ベース、ドラムス、パーカッションのクインテット編成で、(2)「Bela Bela」のみトランペッターのベキンコシ・フラツワヨ（Bhekinkosi ‘Soja’ Hlatshwayo）がゲスト参加している。
(1)「Again Yaphinde Yakhal’ Inkomo」は5拍子だが、複雑さを一切感じさせず不思議な魅力を放つ。この曲に限らず、ンコシ・ゾンドのギターはほとんどエフェクターを通さずにほぼクリーントーン。演奏からも実直な人柄が伝わってくる。
南アフリカにはウブントゥ（ubuntu）という哲学がある。それは人間の普遍的な存在価値や絆を問うもので、「あなたがいるから、私がいる」──つまり自分の命や生活は他の人の支えによって成り立っているものだから、他者を思いやり尊重し、互いに助け合うことが重要なのだという価値観だ。
ンコシ・ゾンドの音楽もこの精神性が下敷きとなっているようだ。競争ではなく調和。その考え方はピースフルでポジティヴなサウンドにもしっかりと表れている。
Nkosi Zondo – guitar
Khwezi Rarani – keyboards, piano
Mlungisi Zwane – bass
Tumelo Segale – drums
Gontse Segona – percussion
Guest :
Bhekinkosi ‘Soja’ Hlatshwayo – trumpet (2)