カメルーン系フランス人ラッパー James BKS、自身のルーツ“アフリカ”を探求する2部作

James BKS - Wolves of Africa

カメルーン系フランス人のラッパー/プロデューサー、ジェイムス・BKS(James BKS)のデビューアルバムである二部作『Wolves of Africa』は、アフリカン・ディアスポラである彼が多くのミュージシャンを迎えてそのルーツを探ろうとするアフリカ系ヒップホップの傑作だ。2022年にリリースされた『Wolves of Africa (Part 1/2)』、そして2023年リリースの第二弾『Wolves of Africa (Pt. 2/2)』ともに素晴らしい内容で、ここでまとめて紹介したい。

父マヌ・ディバンゴもゲスト参加した『Part 1/2』

1982年生まれのJames BKS(本名:Lee-James Edjouma)はカメルーンの伝説的なサックス奏者マヌ・ディバンゴ(Manu Dibango, 1933 – 2020)の息子だが、母親が彼に生物学的な父親が誰であるかを伝えたのは、息子が音楽に真剣に取り組み、知らずとも実の父と同じ道を歩んでいることに気づいたときで、ジェイムスも2012年まで実の父親には会ったことがなかった。

2018年にシングルでリリースされた(2)「Kwele」ではその実父マヌ・ディバンゴと共演。グレイシー・ホプキンス(Gracy Hopkins)をフィーチュアしたラストの(10)「Pana Njia」は父と一緒に作曲したものだが、元々はマヌ・ディバンゴの最後のシンフォニック・ツアーのために書き始められた曲だった。マヌ・ディバンゴは2020年3月24日、パリ近郊のムランで新型コロナウイルス感染症により亡くなったのでジェイムスにとっては父への最後の贈り物となった。

(4)「New Breed」はイドリス・エルバ(Idris Elba)、リトル・シムズ(Little Simz)、そしてQ-Tipをフィーチュアしており、2019年にシングルでリリースされJames BKSにとって最初の大ヒットとなった。

『Part 1/2』 (4)「New Breed」のMV

他にも(6)「Stay Humble」にニック・グラント(Nick Grant)とミラ・J(Mila J)、(9)「Jungle go dumb」にはWill.i.am. といった実力派が参加している。

ヒップホップ界隈以外の人選も目立つ『Part 2/2』

デビュー作から1年後にリリースされた『Wolves of Africa (Pt. 2/2)』は、ジャズ・トランペッターのイブラヒム・マアルーフ(Ibrahim Maalouf)やベナン出身のアフリカ大陸を代表するSSWアンジェリーク・キジョー(Angélique Kidjo)、ラテンロックの巨匠ギタリスト、カルロス・サンタナ(Carlos Santana)といったより多様なゲストが目立つ作品だ。トラックはよりジャジーになるもアフリカらしさを失わず、ジェイムスの音楽の深化を窺わせる内容だ。

(2)「Celebrate Blessings」は感謝の気持ちを表現しており、人生のハードルを乗り越える積極性を讃えている。中央アフリカ〜南アフリカのバントゥーのリズムとゴスペル合唱団にヒップホップの要素を掛け合わせており、親しみやすくも深淵さを感じさせる。

アンジェリーク・キジョーをフィーチュアした『Part 2/2』 (9)「Best We Can」

James BKS - Wolves of Africa
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