コンビに乗り世界を旅する国境なきバンド「Čao Laru」。音楽的ルーツ“ミナス”をテーマにした新譜

Čao Laru - Minas

ブラジル系フランス人たちの“遊牧民”バンド、チャオ・ラルー新譜

2015年にブラジル系フランス人たちによって結成された旅とともにあるバンド、チャオ・ラルー(Čao Laru)。彼らは新作『Minas』で、自身たちのルーツであるブラジル音楽により深く潜り込んだ。街角クラブ(Clube da Esquina)からグラヴェオーラ(Graveola)までミナス・ジェライスの音楽をこよなく愛する彼らは、ブラジルから多くのゲスト・ミュージシャンを彼らの“コンビ”に招き、4枚目のアルバムを完成させた。国籍や国境、言語、男女、出自による格差…そうしたあらゆる壁を取っ払い、真に望む生き方を手に入れようとする彼らと、その音楽の魅力を感じることができる作品だ。

Čao Laru のリーダーはブラジルとエジプトの血を引くヌバール・サルキシアン・ジュニア(Noubar Sarkissian Jr.)。バンド名「チャオ・ラルー」はセルビア語とフランス語を混ぜた言葉で、出会いと別れの両方で使える挨拶の言葉であり、感嘆や分かち合い、歓喜への誘いという意味合いも含んでいるという。
彼らはツアーを中心とする生活により「旅行者」「ノマド(遊牧民)」と呼ばれている。2016年に初めてフランス国外(キューバ)でツアーを行い、その後レンタルしたキャンピングカーでヨーロッパ13ヵ国を訪問し、ブラジルのツアーではフォルクスワーゲンのマイクロバス<コンビ>を購入しバイーア州からパタゴニアまでツアーを行った(2018年の最初のフルレンス・アルバム『Kombiphonie』のジャケットにはその<コンビ>が描かれている)。

グループのメンバーたちの母語(フランス語、スペイン語、ポルトガル語)の共通の単語である“自由”を冠した前作『Libre』から3年以上。今作は多彩なゲスト、ミナス出身の音楽家たち──セウマール(Ceumar)、ガブリエラ・ヴィエガス(Gabriela Viegas)、マリア・ザヌンシオ(Maria Zanuncio)、ルイーザ・ブリーナ(Luiza Brina)、クララ・カストロ(Clara Castro)、ルイーザ・ガイアォン(Luiza Gaião)、サラ・ヴィエイラ(Sarah Vieira)、タタ・ホーシャ(Tata Rocha)、アリス・サンチアゴ(Alice Santiago)──が全面参加しており、ミナス音楽を起源とする豊かな音楽的エッセンスの真髄を吸収・消化した作品に仕上がっている。

(2)「Água de Cachoeira」は最初のハイライト。ミナスというよりもブラジル北東部(ノルデスチ)音楽にインスパイアされており、リフレインが印象的。バリトンサックスのソロやクラリネットのハーモニーも美しくサウダーヂを演出する。

(3)「Pitanga」にはミナスの歌手ルイーザ・ブリーナ(Luiza Brina)がゲスト参加。トロピカリアを感じさせるロックに影響されたサウンドは Čao Laru の真骨頂とも言える。

ルイーザ・ブリーナがゲスト参加した(3)「Pitanga」

クララ・カストロ(Clara Castro)が参加する(5)「Pontes e Poemas」や、ルイーザ・ガイアォン(Luiza Gaião)が歌う(6)「Cada Vez Mais」も印象的。今作はゲストの分だけ多様で個性的な音楽が展開されていることも大きな特徴だ。

前述のようにミナスだけではなく、フォホーなどのブラジル・ノルデスチ音楽からの影響も強いが、特にラストの(11)「Partout (Le monde entier)」はリズムや曲調はダンサブルなフォホーそのものながら、歌詞はフランス語という面白い楽曲となっている。

2020年作『Libre』収録の「Não Estaremos Sós」のMVなどで、彼らの“家”であるコンビ(マイクロバス)を見ることができる

Čao Laru :
Noubar Sarkissian Jr. – cavaquinho, guitar, sanfona, pandeiro, clarinet, vocal
Nicolle Bello – vocal, percussion, dance
Edson Silva – drums, pipe, clarinet, dance, percusison
Pedro Destro – electric bass, clarinet
Vitoria Faria – sanfona, vocal
Graciela Soares – vocal, dance, percussion
Fábio Pádua – flute, clarinet, violin, pipe, guitar, bandolim

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