多彩な表現力を持つ圧倒的な“声”。SSWドミニク・フィス=エメ新譜『Our Roots Run Deep』

Dominique Fils-Aime - Our Roots Run Deep

モントリオールの女性SSWドミニク・フィス=エメ、声で魅せる新譜

声を中心に、思慮深く言葉を重ねていく印象的なR&Bだ。カナダ・モントリオールのシンガーソングライター、ドミニク・フィス=エメ(Dominique Fils-Aime)の2023年新譜『Our Roots Run Deep』。“私たちは地中深くに根差している”に始まる(1)「Our Roots Run Deep」から、“太陽まで登らせて”と歌う(13)「Feeling Like A Plant」まで、余計なものを注意深く削ぎ落としたサウンドをバックに彼女の物語を表現。有機的な流れはある種の必然性を持ち、リスナーをその映画のような物語の中に引き入れていく。

幾重にも重なる声が魅力的だ。このアルバムを聴くと、まずその深く美しい“声”に魅入ってしまう。力強くも繊細なメイン・ヴォーカルだけでなく、伴奏楽器のように和声やリズムの役割を果たすコーラスも素晴らしい。

(1)「Our Roots Run Deep」

控え目ながら、的確に“声”をサポートし引き立てる楽器群のアレンジや録音も最高だ。
ダブルベース、パーカッション、オルガン、トランペットはそれぞれの役割を粛々と果たすが、それぞれの個性を完全に殺して奉仕に徹するわけではなく、優れたバランス感覚で完璧な演奏を吹き込む。

はっきり言って、あらゆる面でパーフェクトなアルバムだ。

(12)「My Mind At Ease」

Dominique Fils-Aime プロフィール

ドミニク・フィス=エメは1984年カナダ・ケベック州モントリオール生まれ。両親はハイチからの移民で、ソウルやジャズなどのアフリカ系アメリカ人の音楽のファンだったという。

2015年にモントリオールに本社を置くテレビ局TVAの歌唱コンテストシリーズ『La Voix』の第3シーズンに出場し、準決勝ラウンドでマット・ホルボウスキー(Matt Holubowski)に敗退した。

2016年に自主制作のEP『The Red』でデビュー。その後モントリオールに拠点を置くEnsoul Recordsと契約し、ジュノ賞「年間最優秀ボーカル・ジャズ・アルバム」を受賞した『Stay Tuned!』(2019年)など何枚かのアルバムをリリースしている。

Dominique Fils-Aimé – vocals
Jacques Roy – bass
Frantz-Lee Leonard – drums
David Osei Afrifa – keyboards
Elli Miller Maboungou – percussion
Hichem Khalfa – trumpet
Etienne Miousse – guitar
Kevin Annocque – didgeridoo

Dominique Fils-Aime - Our Roots Run Deep
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