「地球の音楽」を意味する、本サイト「ムジカテーハ(Musica Terra)」。
世界の良質な音楽を皆様にご紹介しているわけであるが、果たして実際に現地ではどのような音楽が聴かれているのであろうか?
前回のドイツに続き、第2回はアメリカ・ラスベガス。
カジノ、ショーをはじめとしたエンターテイメントが集まるこの街の音楽たちを今回も紹介していきたい。
空港、ホテル、タクシーにいたるまで。眠らない街・ラスベガス
空港に到着したのは日付を回った1時過ぎ。
空港にもスロットマシーンが並ぶのがまたラスベガスらしい。
ここで出迎えるようにかかっていたのはジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)の「Jenny from the Block」。
同年のリミックスアルバム「J to tha L–O! The Remixes」でブラックミュージック要素を打ち出し、人気を確固たるものにしたJ.Loの代表曲であり、ノリのいいテンポはラスベガスという街のスタートにふさわしいと言える。
約一週間の滞在をするのは、ラスベガスでも長い歴史を誇るフラミンゴホテル。
映画『バクジー』でおなじみのバグジー・シーゲルが建てたホテルだ。
フラミンゴは”ミスター・ラスベガス”ことウェイン・ニュートン(Wayne Newton)が常設でショーをやっていることでも有名。
ラスベガスと言えば『オーシャンズ11』の舞台となったベラージオが有名だが、フラミンゴもまたベガスを象徴するホテルである。
なお、エンターテインメントの街・ラスベガスではフラミンゴホテルに限らず、様々なホテルで大物アーティストがショーを行なっている。
有名なのはシーザーズ・パレス・ホテルでのセリーヌ・ディオン(Celine Dion)だが、今回の滞在中でも複数のアーティストの公演が確認出来た。
ホテルはカジノがあるため深夜着にも関わらずロビーは大賑わい。
流れる音楽もまた、空港に続き深夜らしからぬ選曲。
ザラ・ラーション(Zara Larsson )、KTタンストール(KT Tunstall)、ポーラ・アブドゥル(Paula Abdul)etc Billboardな選曲の中で印象的だったのはグリーンデイ(GREEN DAY)の「When I Come Around」。
ホテルや近隣のスーパーなど建物内は比較的スタジアムロックが多い印象だ。
2日目は昼から目的地に向かうためUBERを利用。シボレーのインパラを駆って現れた黒人ドライバーの車内でかかっていたのは、なんとビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)!
現地のタクシーはもっとゴリゴリのHipHopがかかっていると思っていたため、いささか意外な展開。
ドライバーが口ずさむ中、ノリノリで現着。
仕事終わりには老舗のハンバーガーチェーン、IN-N-OUTへ。
21時くらいということもあり、昨日と違い通りには人が溢れ、音楽もガンガン。
ホテル内の移動時に聞こえるのはホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)やメアリー・J.ブライジ(Mary J Blige)など、ソウルな選曲ながら、一歩外に出るとジュース・ワールド(Juice Wrld)、ホワイ・ドント・ウィー(Why Don’t We)など若者向けの選曲。
その中からこちらをPick Up。
DJ miri- Seven remix
言わずと知れたBTSのジョングクが昨年夏にリリースしたsevenのリミックス。ここでもK-Popがしっかりとプレゼンスを示しているのが印象的だった。
世界に誇るSONYのコンテンツ力
3日目、世界最大の展示会CESに出展するSONYのプレスカンファレンスに出席。Sony Honda MobilityのAFEELAの発表含め日本でもニュースを目にした方は多いと思うが、さすがコンテンツを強みとする企業。待ち時間の間の選曲がまたいい。
特に特筆したいのがこちら。
Truth or Dare / Tyla
透明感のある歌声と音数を押さえたミニマルなアフロビートが魅力のシンガー、タイラ(Tyla)のデビューアルバム『Tyla』からの先行シングル。
1月当時はほぼ出回っていなかったタイミングだけにかなり早耳な選曲だが、ソニーミュージックのアーティストということで納得。今年のSummer Sonicへの出演も決定し、要注目の新星R&Bシンガーだ。
朝と夜で選曲がガラリと変わるのもラスベガスの特徴。スウィング・アウト・シスター(Swing Out Sister)やシンディー・ローパー(Cyndi Lauper)など、まさに朝!な爽やかな選曲がニクい。
その中でもPick Upはこちら。
Every Morning / Sugar Ray
この曲を機にハードロック路線からPOPロック路線に舵を切った、彼らの代表曲と言っていいタイトル通りの朝ソング。
ベタな選曲を臆せずやってくれるところにアメリカのオープンな風土を感じる。
CESで見えた最先端のオーディオとレトロ回帰
6日目、この日は移動でTeslaのLoopを利用。
ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)内を行き来してくれる、半自動運転の無料タクシーだ。もちろんこの中でも音楽は鳴り止まない。流れていたのはこの曲。
Shake It Off / Mariah Carey
テイラースウィフト(Taylor Swift)の超人気同名曲に先駆けること約10年。
ジャム&ルイス(Jam & Lewis)と袂を分かち、ジャーメイン・デュプリ(Jermaine Dupri)やスウィズビーツ(Swizz Beatz)などの人気プロデューサーの参画によって、R&B路線を決定づけた傑作『The Emancipation of Mimi 』の一曲。
相席になったイタリア人と思わしき人物がここでもノリノリで歌っていたのも印象的だった。
なお、今回のラスベガス滞在中のメイントピックは、やはり世界最大の展示会CES。
そして、もちろん気になるのは音響系企業だ。
ここでは少しムジカテーハ的、注目の展示を紹介したい。
RCAのオーディオスピーカーや、ALTEC LANSINGのTS100 Vinyl Music Systemなどもさることながら、日本人には馴染み深いaiwaブランドが出展(現在は中国企業が買収)。
懐かしのラジカセデザインのオーディオを見て、現地の若いお兄ちゃんが「It’s Beautiful…」と呟いたのが、展示会のハイライト。
日本だけでなくアメリカでもレトロブームが起きている模様。
また、縦型のレコードプレーヤーも出展。広大な展示会場で見かけることは出来なかったが、気になる展示だ。
そんなこんなで8日目、ラスベガスの長い滞在に別れを告げ、早朝6時UBERを呼び空港へ。
UBER内では現在ラスベガスのシーザーズ・パレス・ホテルで定期公演を行なっているアデル(Adele)などの選曲。
タクシーで普通に音楽が流れているのはやはり日本とは違うところ。
なお、タクシーで気になった曲はこちら。
Fight Song / Rachel platten
日本でもCMなどで使われた2015年曲。それ以降めっきり見なくなったが、活動しているのだろうか。正直朝早すぎて全く頭が働いていない状況でこの選曲はありがたい。
そして帰路へ…となる予定でしたが、飛行機の遅延によりトランジット先のハワイ・ホノルルから日本への便が終了。
急遽、ハワイにエキストラ滞在です。
同じアメリカとは思えないハワイの開放感と選曲
同じアメリカでもラスベガスとは気候も雰囲気もまったく違うハワイ・ホノルルにおいて、流れる音楽もまったく異なるのはある意味で当然ではあるのだが、ハワイアンミュージック一色かと思いきや意外にもメインストリームがかかっている。
とはいえ、重低音の効いたクラブミュージックよりかは幾分さわやかな選曲。
ホテルまでの移動は地元のラジオ局kssk-fmからのこちらのナンバー
The Way You Make Me Feel / Michael Jackson
ほぼMJ作詞・作曲の87年アルバム『Bad』より。MJの曲はいついかなる場所においてもしっくり馴染んでくれるから不思議だ。
その他街中では「makarena」や日本ではお茶のCMに使われていたアンクル・クラッカー(Uncle Kracker)の「Follow me」など、やはりラスベガスとは違った趣き。
路上ライブのテンションも違うことが以下の動画でわかるはずだ。
予想外の行程がありながらも、今回の音楽の旅も無事終了。
最終日の空港でフライトまでの待ち時間に入ったバーでは、「ブルー・ハワイ」でお馴染みのエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)にニヤリ。その他ビートルズ(The Baetles)、キンクス(The Kinks)、ZZトップ(ZZ Top)などロックな選曲。
そこで流れていたこの曲を最後に本稿を終わりにしたい。
American Pie / Don McLean
ドン・マクリーン(Don McLean)が幼少期に体験したアメリカ音楽の祖、バディ・ホリー(Buddy Holly)の死を書いたと言われる本曲。マドンナ(Madonna)のカバーも有名だが、約9分にもおよぶ長編曲にはアメリカ音楽への愛が詰まっている。
いかがだっただろうか。
比較的メジャーな選曲が中心のラスベガス、そしてまた違った表情を見せてくれたハワイ・ホノルル。
現地で流れていた曲をまとめたプレイリストも用意したので、是非本稿の空気が少しでも伝わると幸いである。