より深みを増すCaravan Palace、5年ぶり新譜で提示するエレクトロスウィングの新機軸

Caravan Palace - Gangbusters Melody Club

キャラヴァン・パレス、待望の5thアルバム『Gangbusters Melody Club』

2000年代以降、“エレクトロスウィング”のムーヴメントを牽引してきたフランスのバンド、キャラヴァン・パレス(Caravan Palace)待望の新譜だ。2019年の前作『Chronologic』から5年の時を経てリリースされた『Gangbusters Melody Club』は、所謂王道のエレクトロスウィングと、前作で提示して見せたそれに留まらない彼らの新機軸が融合。丁寧に作り込まれたサウンドで新旧のファンに訴求する仕上がりとなっている。

今作の最初のシングルである(1)「MAD」はバリトンサックスの魅惑の音色が響き、従来的なエレクトロスウィングへの回帰を感じさせる。歌詞では疲弊する日々の生活と、その苦しみを紛らわせるパーティーを二日酔いのようなテンションで極度にヘヴィーに映し出す。

(1)「MAD」のMV。「誰もいないし、正しくもない。立ち去れ、バンバンバン!」

新作は彼らの特色が表れておりダンサブルでキャッチーだが、それは表面的なものにすぎない。彼らの魅力は初期の頃からその隠匿された秘密結社のような誘惑的で逃避的な吸引力にあると思っているが、その魔力はまだ失われていない。サウンドは20年近い時の流れの中で少しずつ変容していっているが、変化しないものはゆっくりと死んでいってしまうのが音楽の世界だ。

アルバムタイトルの「Gangbusters Melody Club」は1930年代に実際に存在したラジオ番組の名らしい。その時代に人々を踊らせ楽しませた音楽は今もなお彼らの最大のインスピレーション源であり続けている。

スタイリッシュなMVの中に屈折した人生観が垣間見える(2)「Mirrors」

閃きやアイディアは前作に一歩譲るかもしれないが、前作を経ての彼らのリズムやサウンドに対する解像度の進化は驚きに値する。まだまだこのジャンルも進化の余地がありそうだ。

エレクトロスウィングを代表するバンド、Caravan Palace

キャラヴァン・パレスはフランス・パリを拠点として2005年に結成された。伝統的なスウィングジャズや、ジャンゴ・ラインハルトに代表されるマヌーシュスウィングといったレトロサウンドを現代的なデジタルサウンドと融合させ、2008年のデビューアルバム『Caravan Palace』が各国のチャートにランクインするなど大きな話題に。その後主にヨーロッパで隆盛を極める“エレクトロスウィング”と呼ばれる分野の筆頭格となった。

2012年に2ndアルバム『Panic』、2015年に3rdアルバム『<|°_°|>』、2019年に4th『Chronologic』をリリースしている。2018年秋にはTikTokのポーズチャレンジで楽曲「Wonderland」が起用され、テレビやラジオでも取り上げられるなど話題を呼んだ。

Caravan Palace :
Zoé Colotis – vocals
Arnaud Vial – guitar
Charles Delaport – bass, electronics

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