アイダホの荒野から鳴らす、捻くれ者のJazz。The Kindness 独創性が輝くデビュー作

The Kindness

アイダホ発のピアノトリオ、The Kindness

ザ・カインドネス(The Kindness)はアメリカ合衆国アイダホ州を拠点とするピアノトリオで、リーダーであるベース奏者アーロン・ミラー(Aaron Miller)はブリガム・ヤング大学(BYU-Idaho)の教員でもあるそうだ。彼らのデビューアルバム『The Kindness』は、そうした知識が全くない状態で聴き始めたが、暗闇に徐々に煙が立ち込めるような印象的なイントロで始まる(1)「How Did the Rose」でのエスビョルン・スヴェンソン・トリオ(e.s.t.)を彷彿させる演奏に、すぐに惹き込まれた。

ピアノとドラムスも繊細かつダイナミック。ピアニストのジャスティン・ニールセン(Justin Nielsen)も音楽教育に情熱を注ぐ人物のようで詳細な経歴までは不明だが、感性もテクニックも素晴らしい。
ドラムスのジェンズ・クロス(Jens Kuross)についてはWikipediaに記事があり、主にスタジオ・ミュージシャンやツアー・ミュージシャンとして数多くの経験を積んできたようだ。

彼らが既成のジャズではなく、それを軸にしながらも新しい表現を追求しようとしていることはサウンドから明らかだ。ポストプロダクションに多くの時間をかけたであろう凝ったサウンドが随所に散りばめられているが、それらはあくまでも音楽性を阻害せずスパイスとして効いている。ベースのアーロン・ミラーが語っているとおり、彼らは“意図的にありきたりなジャズ・アルバムのサウンドを避けようとしている”のだ。その象徴的な曲は、(4)「Faithless」だろう。

彼らのYouTubeを見るとスタンダードのカヴァーも普段はやっているようだが、今作は全てオリジナル。(1)「How Did the Rose」がピアノのジャスティン・ニールセン作曲、抒情的なバラード(5)「I Can’t Take You With Me」がドラマーのジェンズ・クロスの作曲。ほかは全てアーロン・ミラー作曲だ。

(7)「The Path」

アルバムは2023年9月に、アイダホ州立大学で教鞭を執るジョナサン・アームストロング(Jonathan Armstrong)が創立したレーベル「City Creek Records」からリリースされた。

次の言葉は、彼らの特異な立ち位置を象徴するようで興味深い。

アイダホ州の荒野の出身であるThe Kindness Trioは、そのような荒野が生み出すあらゆる音楽を反射的に切り捨ててしまう俗物に対して、音楽的に中指を立てる自分たちに気づいた。代わりに、ソングライターや大学教授として自分たちの特異性を伸ばすことを選択した彼らは、見知らぬ土地で見知らぬ人のままで、ジャガイモ栽培で有名な州で芸術的なジャズに準ずるオリジナル曲を演奏している。

Eastern Idaho Jazz Society

The Kindness :
Justin Nielsen – piano
Jens Kuross – drums
Aaron Miller – bass

The Kindness
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