クリスチャン・ランダル新作はシューマン『詩人の恋』
エストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)の新作『Dichterliebe』は、ロベルト・シューマン(1810 – 1856)の連作歌曲『詩人の恋』の新たな解釈であると同時に、この古典的名作をより情感豊かにスケールアップした傑作だ。
クリスチャン・ランダルはドイツの住んでいた頃、バリトン歌手と活動しシューマンの代表作のひとつである『詩人の恋』をレパートリーとし、歌詞と音楽のつながりについて深い探究を行っていた。やがて時が経ち、彼はこの作品についてピアノソロにしたときにどのような機能を持つかを試す時が来たと感じ、『詩人の恋』全16曲をソロピアノにアレンジ。原曲の完成されたリズム、ハーモニー、メロディの各要素をさまざまな角度から再考し、さらに自然と音楽が発生するための即興の余地も残した。
結果として、クラシックやジャズといったカテゴライズに関係なく、音楽がただ“溢れ出す”ような作品が出来上がった。
もとが文学的とも評されるシューマンだが、ピアノのみで即興も交え奏でられる『詩人の恋』は従来の譜面どおりのピアノと歌唱による作品群と比べても、より感傷的、詩的な印象を受ける。欧州随一のピアニストによるシューマンは、ジャズ、クラシックどちらのファンにとってもきっと楽しめるだろう。
Kristjan Randalu プロフィール
クリスチャン・ランダルは1978年エストニア・タリン生まれのピアニスト。父親カレ・ランダル(Kalle Randalu, 1956 – )も著名なピアニストで、妹のリーサ・ランダル(Liisa Randalu, 1986 – )はクラシックのヴィオラ奏者という音楽一家に生まれ育った。
クラシック音楽が私が聴いていたポップスと衝突したとき、ブレイクが訪れた。
Kristjan Randalu
最初のバンドを試してみて、音楽で自由に表現をしたいと思い行動したことが最初のジャズとの接点だった。
エストニア、ロンドン、ニューヨークでクラシックとジャズを学び、1997年にビベラッハ・ジャズ賞、2002年にモントルー・ジャズ・フェスティバルのソロピアノコンクール優勝、2007年にバーデン・ヴュルテンベルク州ジャズ賞を受賞するなど欧州を代表するピアニストとして知られている。
これまでにマーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)、アリ・ホーニグ(Ari Hoenig)、 ダファー・ヨーゼフ(Dhafer Youssef)、ニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvær)、グェン・レ(Nguyên Lê)ら、世界的なジャズミュージシャンと共演をしてきている。
Kristjan Randalu – piano