リオのSSWベルナルド・ヂニス、詩人パウロ・セザール・ピニェイロと共作の穏やかな歌曲集

Bernardo Diniz - Saída de Casa

リオのSSW、ベルナルド・ヂニスによる優しく美しい歌

Bernardo Diniz

ブラジル・リオデジャネイロのSSW、ベルナルド・ヂニス(Bernardo Diniz)が初のソロ名義のアルバムとなる『Saída de Casa』をリリースした。これまでにイアラ・フェレイラ(Iara Ferreira)との『Bené e Iaiá』(2015年)、ロナウド・ゴンサウヴェス(Ronaldo Gonçalves)との『O Samba Vai Durar』(2017年)とデュオ名義で作品をリリースしているが、今作はブラジルを代表する詩人パウロ・セザール・ピニェイロ(Paulo Cesar Pinheiro)との共作で10曲のオリジナルを収録。

ギターとヴィオラ・カイピラ、ヴォーカル、作編曲を担うベルナルド・ヂニスはショーロの器楽奏者としてキャリアをスタートさせており、ここでもショーロやボサノヴァ、サンバといったブラジル音楽の伝統を汲んだ豊かな器楽アンサンブルのアレンジが印象深い。ヴィオラ・カイピラやフルート、コントラバス、パーカッションの素朴で温かい音色がどこか懐かしさを覚えさせる。特にヴォーカルに寄り添いその旋律の美しさを何倍にも増幅するオブリガートのアレンジは秀逸だ。

サウダーヂ感溢れる短調のマルシャ・ハンショ(3)「Rancho dos Passarinhos」は小鳥たちの声を模したピッコロやフルートの音色が心を躍らせる。気鋭トロンボーン奏者ハファエル・ホーシャ(Rafael Rocha)が参加した(5)「A Voz do Mar」、どこまでも美しく、優しく希望を抱くような佳曲(8)「Jurando a Bandeira」がとにかく素晴らしい。ラストの(10)「Destino de Violeiro」は先鋭的な一面もうかがえる。

(3)「Rancho dos Passarinhos」

ベルナルド・ヂニスは今作について、70年代のブラジル音楽の雰囲気、とりわけドリ・カイミ(Dori Caymmi)、エドゥ・ロボ(Edu Lobo)、そしてマリリア・メダーリャ(Marilia Medalha)といった先人たちの作品の編曲や楽器編成、サウンドを再現するように務めたという。さらにはMPBやショーロのみならず、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)風のハーモニーからも彼の個人的な音楽遍歴が窺える。

Bernardo Diniz 略歴

ベルナルド・ヂニスは現在33歳のギタリスト/作曲家。 ミュージシャンのキャリアはショーロから始まり、彼の最初の仕事は伝説的マンドリン奏者ジョエル・ナシメント(Joel Nascimento)の伴奏でブラジル各地で演奏を行うことだった。 現代ブラジルを代表するラージ・アンサンブルの指揮者ガイア・ヴィルメルのグループ「Tungo」にも在籍していた。

作曲家としてはルイーザ・ラセルダ(Luisa Lacerda)の2024年作『O Canto e a Asa』はベルナルドがイレッシ(Ilessi)と共作した曲「Enigma」が提供されている。

近年はシンガーソングライターとして歌うことにも力を注ぐ彼は、パンデミック期に構想されたこのアルバムで詩人/作詞家パウロ・セザール・ピニェイロと共作した多数の未発表曲のうち、10曲をソロアルバムに収め世に送り出した。

(8)「Jurando a Bandeira」

Bernardo Diniz – guitar, viola caipira
Rafael Meninão – accordion
Bruno Repsold – contrabass
Marcelo Cebukin – flutes
Marcus Thadeu – percussion
Fernando Moura – Rhodes, clavinet, syhth
Diego Garbin – trumpet
Rafael Rocha – trombone
Federico Puppi – cello

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