現代ブラジル音楽を代表するSSW、セウ 5年ぶりのオリジナル・アルバム『Novela』

Céu - Novela

内省と開放の境界を曖昧にするセウ新譜『Novela』

ブラジルを代表する女性シンガーソングライター、セウ(Céu)がオリジナルアルバムとしては5年ぶりとなる新作『Novela』をリリースした。トロピカリアの流れを汲み、MPBやロック、レゲエなどを取り入れたセウらしい柔軟なサウンドの作品で、ノスタルジックと洗練が混ざり合った耳障りがなんとも心地良いアルバムだ。

アルバムは米国の女性ラッパー、レディバグ・メッカ(Ladybug Mecca)をゲストに迎えた(1)「Raiou」から始まる。セウによるポルトガル語のヴォーカルに対し、レディバグ・メッカのラップは英語。丁寧にアレンジされたストリングスや木管が適度にローファイでライヴ感のあるバンドサウンドに絡み、アルバムの方向性を力強く提示する。

(3)「Gerando na Alta」はセネガル系フランス人シンガー、アナイス(anaiis)との共演。歌詞は女性同士の強い結びつき・友情について歌ったもので、どんなことがあっても互いに献身的な愛で支え合うことを約束する。

(3)「Gerando na Alta」

アルバムタイトルのNovela(小説)を曲名に含む(5)「Into My Novela」では今作のプロデューサーであるエイドリアン・ヤング(Adrian Younge)作品での起用で知られる男性シンガー、ローレン・オデン(Loren Oden)と共演。どこか気怠さを感じさせるソウルフルな歌唱を聴かせてくれる。

アルバムのレコーディングはロサンゼルスのリニア・ラボ・スタジオ(Linear Labs Studio)で行われ、同スタジオの創設者であるアメリカのマルチ器楽奏者/プロデューサーのエイドリアン・ヤングと、『Tropix』(2016年)や『Apká!』(2019年)でも共演したペルナンブーコ出身で元ナサォン・ズンビ(Nação Zumbi)のドラマーとしても知られる打楽器奏者/プロデューサーのプピロ(Pupillo)がプロデュースを担当した。演奏も主にこの2人に加えルーカス・マルチンス(Lucas Martins)によるベースという編成が基本となり、UKロックにも通じる質感を演出している。

Céu プロフィール

セウは1980年ブラジル・サンパウロ生まれ。父親は音楽家で、幼少期は父が好んだエイトル・ヴィラ=ロボスやエルネスト・ナザレー、オルランド・シウバといった音楽家に影響を受けたという。

彼女は15歳のときにミュージシャンになることを決意し、10代後半までに音楽理論やヴィオラォン(ナイロン弦ギター)の演奏を学んだ。2005年にセルフタイトルのデビューアルバム『Céu』をリリースしブラジル本国のみならず日本やヨーロッパでも話題となり、ラテン・グラミー賞の「最優秀新人賞」へのノミネートや、2008年にはグラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ワールド・ミュージック・アルバムにもノミネートされた。

4作目『Tropix』はラテングラミー賞の最優秀ポルトガル語コンテンポラリー・ポップ・アルバム部門を初受賞。また、5作目の『Apká!』もサンパウロ美術批評家協会によって同年下半期のブラジルのベストアルバム25枚のひとつに選出されるなど高く評価された。

2021年には全編カヴァー・アルバム『Um Gosto de Sol』をリリース。ジョアン・ジルベルトやミルトン・ナシメントといったブラジルの音楽家以外にも、ビースティ・ボーイズ、ジミ・ヘンドリックス、シャーデーといった多彩な楽曲を彼女流にアレンジしている。

Céu - Novela
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