古都カサブランカの街の匂いが薫る。気鋭ピアノトリオ、EYM Trioによる直情的ワールド・ジャズ

EYM Trio - Casablanca

EYM Trio、久々に3人だけの原点に立ち返る新作

西はヨーロッパや北アフリカ、東はインドまで、広大な音楽文化の地図をジャズの上で描き出すフランスのピアノトリオ、EYM Trioが新作『Casablanca』をリリースした。モロッコ最大の都市をタイトルに据えた今作はアラビア音楽の伝統を大胆に取り入れ、久々にゲストを迎えず、トリオの3人のみでオリジナリティに富む壮大な音世界を繰り広げる素晴らしい作品に仕上がっている。

トリオのピアニスト、エリー・デュフール(Elie Dufour)はペダルで制御できる機械式のピアノ弦のミュート装置をグランドピアノに設置しており、随所で聴かれるその特徴的なピアノの音は今作の大きな特色のひとつとなっている。

プリペアド・ピアノのようだが、実際は足のペダルでコントロールするミュート装置が取り付けられたピアノの音色を聴くことができる表題曲(3)「Casablanca」

音色だけでなく、もちろんリズムや旋律、楽曲の構成も彼ららしい“ワールド・ミュージック”感に溢れており、ほかではなかなか聴くことのできない異国情緒溢れるジャズを楽しむことができる。

アルバム名『カサブランカ』とは、紀元前からの歴史あるモロッコの港湾都市の名だ。casa branca, つまり「白い家」を意味するスペイン語やポルトガル語に由来する。ヨーロッパとアメリカ大陸を繋ぐ貿易の拠点として栄え、さまざまな文化が混在するこの地域の雑多な空気感が、彼らの音楽を通して匂いを伴って伝わってくる。

EYM Trio 略歴

EYM trio はブルガリア系のピアニスト、エリー・デュフール(Elie Dufour)、ベーシストのヤン・ファイフェット(Yann Phayphet)、そしてドラマーのマルク・ミシェル(Marc Michel)の3人がフランス・リヨンの音楽院で出会い2010年に結成されたピアノトリオ。北アフリカ、ブルガリア、ルーマニア、インドなどの民族音楽にインスパイアされた音楽性で徐々に人気を得、2013年に『Genesi』でデビュー。2018年作『Sādhana』ではイスラエルのギタリスト、ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)やインドの歌手ミランデ・シャー(Mirande Shah)をゲストに迎え、その独自の音楽性を更に発展させた。
さらに、2023年作『Bangalore』ではインドの歌手/フルート奏者のヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)と全面的にコラボレーションし、話題となった。

トリオ名は3人のメンバーの頭文字が由来となっている。

『Casablanca』のEPK

Elie Dufour – piano
Yann Phayphet – contrabass
Marc Michel – drums

関連記事

EYM Trio - Casablanca
Follow Música Terra