懐かしさと現代性が同居する、時代を超えた音楽。仏ベース奏者シルヴァン・ダニエル新譜

Sylvain Daniel - SlyDee

フランスのベーシスト、シルヴァン・ダニエル新作

フランスのベーシスト/作曲家シルヴァン・ダニエル(Sylvain Daniel)の新譜『SlyDee』は、スライ&ザ・ファミリーストーン(Sly & the Family Stone)やハービー・ハンコック(Herbie Hancock)といった1970年代のジャズ/フュージョン、ジェームス・ブラウン(James Brown)のファンク、さらにはエレクトリック・マイルスやヒップホップを経由した時代を超越する豪華なサウンドを聴かせてくれる楽しいアルバムだ。

アルノー・ルラン(Arnaud Roulin)が弾くシンセが古の時代を呼び起こす(1)「Fresh Start」でアルバムは幕を開ける。前編を通してタイトなグルーヴをつくるのはシルヴァン・ダニエルのベースと、ヴィンセント・テーガー(Vincent Taeger)のドラムス。ソリストとして際立つのはトランペットのエメリック・アヴィス(Aymeric Avice)だ。

(1)「Fresh Start」

(3)「No Sex In Verneuil」は懐かしのヴォコーダーを通したヴォーカルもあり、あらゆる面で丁寧に工夫された楽曲自体の良さも含めて推せる。曲調はハービー・ハンコックのヘッド・ハンターズ(Head Hunters)を思わせるもので、懐かしさを呼び起こす。

(3)「No Sex In Verneuil」

(5)「Le Monde est à nous」にはラッパーのバンジャマン・エップス(Benjamin Epps)がゲスト参加。インスト中心の今作において、前半の絶頂のような楽曲となっており、ディスコとジャズ・フュージョンの丁度中間のようなサウンドも完璧だ。

ちょっと毛色の異なるところではクラブボッサ風の(10)「Bossa Champi」。ベースはダブルベースのような粘り気のあるエフェクターを通し、トマス・ド・プルクリ(Thomas De Pourquery)のアルトサックスが清涼感をもたらす。

ヴォーカル・グループのスペレット(Supérette)が参加した(12)「Psalmocracy」も心地よい。

Sylvain Daniel 略歴

シルヴァン・ダニエルは1979年生まれのベーシスト/作曲家。エレクトリック・ベースをメインにするが、フリューゲルホルン、キーボード、パーカッションなども演奏するマルチ奏者。

7歳からナント地方音楽院でレッスンを受け始め、10年間クラシック音楽を学び、その後に独学でエレクトリック・ベースを学び始めた。1999年にサックス奏者のジュリアン・ルロ(Julien Lourau)とツアーを行い、彼のアルバム『Gambit』(2000年)に参加。その後パリに移りレ・ファレーズ(Les Falaises)や国立ジャズ管弦楽団(Orchestre National de Jazz)に参加し、いくつかのアルバムを録音。

2020年に自身の名義での最初のアルバム『Pauca meae』をリリースしている。

Sylvain Daniel – bass, vocals, percussions, additional keys, fugelhorn
Aymeric Avice – trumpet, fugelhorn
Bruno Ruder – piano, Rhodes, Wurlitzer, DX7
Arnaud Roulin – synthetizer
Vincent Taeger – drums
Thomas De Pourquery – alto saxophone (11)
Benjamin Epps – vocal (5)
Supérette – vocal (12)
Violette Daniel – vocals (14)
Eliott Daniel – vocals (14)

Sylvain Daniel - SlyDee
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