Benziê、ボサノヴァの流れを汲んだ極上MPB
ブラジルのデュオ・ユニット、ベンジエー(Benziê)のデビューアルバム『Entre』が素晴らしい。MPB、ボサノヴァ、レゲエ、サーフミュージックなどを混合した清涼感のあるサウンドで、抜群のハーモニー感覚とメロディーのセンス、バランスの良い男女ヴォーカルが最高に気持ちいい。
Benziê はともにサンパウロ州ソロカバ出身の女性SSW/ギタリストヴィキ・コネジェーロ(Vic Conegero)と、男性SSW/ギタリストデュ・ペソア(Du Pessoa)から成るデュオ。曲は二人それぞれが書いたり共作だったり。エレクトロニックを小技的に絡めたサウンドにナチュラルなテイストのヴォーカル、ボサノヴァやトロピカリアなどブラジルの音楽文化を今に繋ぐ楽曲たちはとても自然に聴こえるが相当な拘りが伺える。
アルバムはヴィキのヴォーカルが多重録音された(1)「Acendi o sol」で幕を開く。すぐにパーカッションが加わり、ビリンバウを思わせるエレクトリック・ギターなどが響く中、デュ・ペソアのヴォーカル・パートも登場。音響には効果的だが派手ではない後処理も施されており、今作が最高に丁寧に作り上げられた作品であることを確信させてくれる。
ブラジリアンAORな(3)「Véspera」は今作の最初の絶頂だ。スウィングするグルーヴ、心地よいメロディーラインのシンコペーション、絶妙な楽器群のアレンジ。どこをとっても素晴らしい。
(5)「Tem que viver pra saber」は二人の共作曲で、トロピカリアの影響も強く受けていることを感じさせる。
つづく(6)「Meu cavaquinho」もブラジルの伝説的バンド、ノヴォス・バイアーノス(Novos Baianos)を思い起こさせる曲だ。曲のタイトルも含めて、「Brasil Pandeiro」を意識しているのではないだろうか…。
ヴィキ・コネジェーロ作の(7)「Samba Azul」は非常に現代的に洗練されたサンバ/ボサノヴァ。MVのイメージどおり、爽やかな夏の心地。
デュ・ペソア作の(8)「Sal no corpo paz na alma」、つづく(9)「Sereia」はレゲエのエッセンスが取り入れられているが、こうした個性的なリズムの中にもBenziê のアイデンティティは決して埋もれず、あくまでも表現手法のひとつとしてブラジルのみならず世界の様々な音楽表現を試みていることがわかる。
素晴らしい音楽的センスを感じさせるBenziêのデビュー作。
ブラジルから現れた新しい才能が今後どんな音楽を届けてくれるのか、とても楽しみだ。