伝統音楽を軸に、あらゆる革新的な表現を試みる傑作。AKB新譜『Bomba Pop』

Amsterdam Klezmer Band - Bomba Pop

Amsterdam Klezmer Band 新作『Bomba Pop』

結成から30年近くが経ってもなおその進化を止めないオランダの7人組バンド、アムステルダム・クレズマー・バンドAmsterdam Klezmer Band, 通称:AKB)の2024年新作『Bomba Pop』。ウィーン在住のドイツ人DJ/プロデューサー、ダンケルブント(Dunkelbunt)ことウルフ・リンデマン(Ulf Lindemann)とのコラボレーションで、クレズマー、バルカン、スカ、ジャズ、ジプシー、オリエンタル、ヒップホップが融合した伝統的かつ前衛的な世界観を持った楽しい光景が繰り広げられる。

AKBの物語は伝統的なイディッシュ音楽を演奏するストリート・ミュージシャンのグループとして1996年に始まった。これまでに17枚のアルバムをリリースする中で彼らは国際的な評価を地道に高め続けてきた。18枚目のアルバムとなる今作はクレズマーをほかの音楽文化と強力に結びつけ、あらゆる音楽文化に通底する共通点を探ろうとする。
例えば(1)「Do It In Amsterdam」はヒップホップ、(8)「Sirens of Amsterdam」はダブといった明確なテーマを持つ曲もあれば、エレクトロスウィングの雰囲気が全体的に漂っていたりするが、“クレズマー音楽”という彼らの軸はブレることがない。さらには(5)「Fire」などで見せる変拍子(9/8拍子)の複雑なリズムですらダンス・ミュージックに仕上げてるセンスは素晴らしい。

(3)「Bomba」

バンドのフロントマンであるクラリネット奏者/打楽器奏者のヤンフィー・ファン・ストリエン(Janfie van Strien)は、今作について『座って話し始めると、みんなが「ダンスアルバムを作ろう」という感じだったよ!』と語っている。そうして生まれたのが、彼らが“クレズトロニック(kleztronic)”と呼ぶ今作だ。

速さ、軽快さ、技巧──これら全てが揃った生演奏に、エレクトロニックが組み合わさって生まれる現代のクレズマー音楽。これほど刺激的な音楽を聴き逃す手はない。

(8)「Sirens of Amsterdam」

今作のコラボレーターであるDunkelbuntとは、バルカン・ビートが世界的なブームとなった2000年代の彼のアルバム『Morgenlandfahrt』(2007年)以来のコラボレーションだ。そのアルバムでDunkelbuntはAKBのオリジナル曲である「Naie Chuppe」と「Chassid in Amsterdam」をリミックスし、「La Revedere」と「Black eyed sea」に見事に変身させた。

常に新鮮な表現を求めるAKBにとって、そんな“型破りなプロデューサー”との本格的な協業は彼らの音楽を新たな次元に引き上げるために必要なものだった。伝統的な音楽や文化への大いなるリスペクトと、それらに独自のアイディアを加え新しいものを生み出そうとするチャレンジ精神が同居する今作のサウンドデザインを聴けば、彼らの選択を否定する者はいないだろう。

Amsterdam Klezmer Band :
Job Chajes – saxophone, rap
Janfie van Strien – clarinet, percussion
Gijs Levelt – trumpet
Joop van der Linden – trombone, guitar
Jasper de Beer – bass
Alec Kopyt – percussion, vocals
Ellen van Vliet – accordion

Guest :
Brenna MacCrimmon – vocal

Amsterdam Klezmer Band - Bomba Pop
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