アンゴラ、ブラジル、ポルトガルを繋ぐルカ・レボルダン
アンゴラ出身、青春時代をブラジルで過ごし、現在はポルトガルを拠点とするパーカッション奏者ルカ・レボルダン(Ruca Rebordão)。これまで200枚以上のアルバムの録音に参加してきたというベテランだが、彼自身の名義としてはこれが初めてのアルバムになるそうだ。『Mestiço Atlântico』、“混血の大西洋”と題された今作で、彼がこれまで過ごしてきたポルトガル語文化圏での多様な音楽をひとつのサラダボウルに入れ、大西洋の両岸をつなぐ壮大な音空間を作り上げた。
それぞれ異なる時期に録音された楽曲群には、曲ごとに多様な音楽家たちが参加し文化的多様性を示す。今作のプロデューサーでマルチ奏者のシロ・ベルティーニ(Ciro Bertini)はフルート、鍵盤、ギターなどで全体を強力にサポートし、アルバム全体に跨る一貫したテーマを見事にまとめている。
冒頭曲(1)「Berimbando」はビリンバウやパンデイロによって生み出されるプリミティヴで力強いビートが特徴的。中間部ではラッパーのビル(Biru)が登場し異なる彩りを添える。
アルバム・リリースの直前に発表されたシングル(2)「Minha Terra」はリスボンのシンガーソングライター、ルイス・カラコル(Luiz Caracol)がヴォーカル/ギター/ベースで参加。
ブラジルのシンガー、ルアンダ・コゼッチ(Luanda Cozetti)が歌う(3)「Estórias da Floresta」、ポルトガルのサックス奏者ナナ・ソウザ・ディアス(Nanã Sousa Dias)をフィーチュアしたフュージョン風の(4)「7 Amigos」、ポルトガルの巨匠パウロ・デ・カルヴァーリョ(Paulo de Carvalho)が歌う(6)「Quem tem Mar」など、ノンストップで次から次へと濃密な音楽体験が押し寄せる。
ルカ・レボルダンの最初のシングルである(7)「Vale Santiago」にはポルトガルのバンスリ(竹笛)奏者のラン・キアオ(Rão Kyao)が参加。どこか哀愁を帯びた3拍子の素朴なメロディーが印象的で、ヨーロッパからインドまでを繋ぐサウンドスケープも妙に心地よい。
アルバムの終盤にはクールダウンを促すような曲が収められており、カリンバの演奏が美しい(11)「Afro Maine」に、ルカ・レボルダンが自らのヴォーカルを重ねハーモニーを形作る(12)「Ya Tilou」といった素朴だが音楽や歌の真髄に触れるような良曲が並んでいる。
Ruca Rebordão 略歴
ルカ・レボルダンはポルトガル語を公用語とするアフリカ南西部のアンゴラ共和国の北東部に位置するルンダ・ノルテ州ドゥンドのポルトガル系の家系に生まれ、13歳までそこで過ごす中で現地のリズムの虜となり音楽家としての礎を築いた。その後ブラジルに移住し多感で活発なティーンエイジャー時代を過ごし音楽の多様性を学び、のちにポルトガルのリスボンに居を移している。さらには米国とオーストラリアに住んだこともあるそうだ。
これまでに打楽器奏者として世界各国のミュージシャンと共演を重ねており、その膨大なリストの中には日本を代表するサックス奏者の渡辺貞夫(Sadao Watanabe)の名前もある。
Ruca Rebordão – percussions, synthsizer, vocal, chorus
Luiz Caracol – vocal, electric guitar, acoustic guitar, electric bass, chorus (2)
Ciro Bertini – flute, piano, keyboards, accordion, acoustic guitar, electric bass, chorus, voice (2, 4, 5, 6, 7)
Chris Wells – piano, bass, Fender Rhodes, percussion (1, 9)
Biru – vocal (1)
Luanda Cozetti – vocal (3)
Beto Bertolini – field recordings (3)
Nanã Sousa Dias – soprano saxophone (4)
António Pinto – electric guitar, bandolim, portuguese guitar, Roland GR-300, 12 string guitar (4, 7)
Norton Daiello – electric bass (4)
Ivo Costa – drums (4, 7)
Maiara Rebordão – percussion effects, birds (4)
Paulo de Carvalho – vocal (6)
Múcio Sá – acoustic guitar (6)
Sandra Martins – cello (6)
Rão Kyao – bansuri flute (7)
Gustavo Roriz – bass (7)
Guto Lucena – tenor saxophone (9)