チュニジア出身ベーシスト/作曲家マルワン・アッラムのデビュー作
チュニジア出身、現在は米国ニューヨークで活動するベーシスト/作曲家マルワン・アッラム(Marwan Allam)がデビューアルバム『باب بحر』(英字転写:Bab Bhar)をリリースした。
アルバムのタイトルは彼の祖国であるチュニジアの首都チュニスのヨーロッパ式の新市街とイスラム統治時代に栄えた旧市街(メディナ)を分つ歴史的な門「バブ・エル・バール(海の門)」、別名「ポルト・ド・フランス(フランスの門)」に因んで名付けられている。その名は北アフリカにやってきたあらゆる文化──ベルベル、アラブ、ローマ、トルコ、アンダルシアなど様々な文化──の象徴として機能しており、彼の音楽性もまたその門をくぐったあらゆる旅人たちのように多様だ。
アルバム収録曲はすべてマルワン・アッラムの作曲。
(1)「Ajmeya」から、伝統的なアラブ系北アフリカ音楽とジャズのハーモニー、アフロアメリカン音楽を融合するという彼のヴィジョンは明白だ。ベーシストのリーダー作であるにも拘らず、彼はこの楽器を無理に主役にさせるようなことはさせず、淡々とその“役割”をこなし、音楽全体の調和を重んじる。曲のラストの部分ではグナワのリズムも取り入れ、文化的な軸を強調している。
(2)「Sammi Buleria」は22/8拍子というリズムで、アンダルシア文化の香る北アフリカを反映する。
コラボレーターであるマルワンと同郷チュニジア出身でNYで活躍するサックス奏者ヤシーン・ボラレス(Yacine Boulares)も、アメリカ合衆国出身のピアニストのクリス・マッカーシー(Chris McCarthy)もアルメニア系ドラマーのサムヴェル・サルキシャン(Samvel Sarkisyan)とのアンサンブルも抜群。
(5)「Istikhbar Isbaain」は弓弾きのソロベース演奏、ラストのエキサイティングな(7)「Orange Cake」も素晴らしい。
Marwan Allam – double bass
Chris McCarthy – piano
Samvel Sarkisyan – drums
Yacine Boulares – tenor saxophone, soprano saxophones