最先端の音楽を探究するスコットランド発のトリオ
スコットランドのジャズトリオ、Trio HLK が2ndアルバムとなる『Anthropometricks』をリリースした。鍵盤奏者/作曲家のリッチ・ハロルド(Rich Harrold)、8弦ギター奏者アント・ロウ(Ant Law)、そしてドラマーのリッチ・カス(Rich Kass)の頭文字から取られたこのトリオは、伝統的なジャズやクラシックの枠に囚われない自由な発想で聴き応え抜群の音楽を発信している。
アルバムには聴覚障害を抱えながらもスコットランドを代表するミュージシャンとして活躍し、1989年にはグラミー賞にも輝いた打楽器奏者エヴェリン・グレニー(Evelyn Glennie)が8曲中5曲に参加し大きく貢献。さらにインド出身の天才的ヴォーカリストのヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)が(1)「Anthropometricks」に、そして主にクラシックの分野で活躍する英国のチェリストのナタリー・クレイン(Natalie Clein)が2曲でゲスト参加しており、そのメンツからも相当にバラエティ豊かな作品であると窺える。
「人体計測学」を意味するタイトルが付けられた(1)「Anthropometricks」では、ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパルがインド音楽に基づく驚異的な歌唱を聴かせる。楽曲自体はジャズとプログレの融合で、実験的な旋律やリズムは随所に音楽的な工夫や拘りが見られ相当にエキサイティングだ。この曲を聴いて感嘆しない人など、果たして存在するのだろうか? リズムギター、リードギター、そしてベースを巧みに一人三役で演奏する8弦ギターの存在にも耳を奪われるだろう。
5拍子を軸としながら、複雑なポリリズムで装飾された(2)「fIVe」も凄まじい。音楽は数学であり、パズルでもあり、そしてジャズとクラシックとプログレは紙一重だと改めて感じさせてくれる構成の驚くべき楽曲だ。
彼らの楽曲も演奏も、限りなく繊細でダイナミックだ。ハーモニーもリズムもまさに変幻自在。全曲が鍵盤奏者リッチ・ハロルドの作曲だが、各々のアンサンブルやソロも創造性に富む。
Trio HLK の3人は2015年に初めて出会い、2016年に最初のアルバム『Standard Time』(2018年リリース)の制作に着手。大英帝国勲章授与者であるエヴェリン・グレニーとの協力はこの頃から。
グラモフォン・マガジン(Gramophone Magazine)は彼らを“真の革新者”と称し、デビューライヴのパフォーマンスはジャズワイズ(Jazzwise)によって“他に類を見ない並外れたパフォーマンス”と評された。
Trio HLK :
Rich Harrold – piano, synth
Ant Law – 8-string guitar
Rich Kass – drums
Guests :
Varijashree Venugopal – vocal (1)
Natalie Clein – cello (2, 3)
Evelyn Glennie – percussion, vibraphone (3, 4, 6, 7, 8)