誰もが持つ普遍的な感情をストレートに表現する新たな才能、Mericia
ブラジルの豊かな音楽文化を象徴するような若い才能が現れた。サンパウロを拠点とするシンガーソングライター、メリシア(Mericia)のデビューEP『PAPA GOIABA』は、ブラジルらしさを継承する音と、飾らず自然体のポップ・センスが魅力的な一枚だ。iPhoneの着信音のサンプリングで始まる(1)「É Paixão」からの5曲、わずか13分間の儚く美しい夢のような音楽体験を味わってみよう……
(1)「É Paixão」では、普遍的な魅力をもつコード進行のガットギターをバックにメリシアの少女性を帯びた歌声がとても魅力的に響く。ドラムス、エレクトリックギター、そしてトロンボーンがさりげなく楽曲を彩り、夕暮れどきのサウダージを感じさせる。
(2)「Esporte Fino」はファンキ(ブラジリアン・ファンク)とヒップホップ、ソウルが一体となったサウンドが爽快。1曲目とは対照的にベースやドラムスは力強く、誇り高くシンコペーションする。ヴォーカルもソウルフルで素晴らしいが、サビでの効果的な転調には非凡さ作曲のセンスが象徴的に表れている。
(3)「Encantos Mil」は跳ねたリズムが1曲目と同様にグルーヴする。楽曲を構成するそれぞれのブロックは基本的に4小節単位でのコード進行を繰り返すシンプルな構成だが、サウンド面での繊細なこだわりが楽曲を何倍も魅力的にしている。
(4)「Efeito Moral」はピアノを中心としたどこまでも美しいバラード。ジャズやR&Bに見られる豊かなハーモニーが特徴的で、ゴスペルのようなコーラスワークも素晴らしい。
インターネット上では彼女についての情報は少ない。というか、ほぼ皆無である。
YouTubeに動画をアップし始めたのも2年前からのようだ。
ただ、シンガーソングライターとしての卓越したポップセンスは紛い物ではない。
(5)「Even Bossa If I Have To」では“好きではないボサノヴァ”を歌いたくなるほど一途な感情を歌っており、そのセンスもユニークだ。