ルゾフォニアと地中海音楽の魅力を凝縮したバンド、Ayom。3つのテーマから成る傑作新譜『Sa​.​Li​.​Va』

Ayom - Sa​.​Li​.​Va

多文化共生を象徴するバンド、Ayom の新作

ブラジル、アンゴラ、イタリア、ギリシャ出身の6人のメンバーで構成され、ポルトガルのリスボンとスペインのバルセロナを拠点とする多文化バンド、アヨム(Ayom)の2ndアルバム『Sa​.​Li​.​Va』が素晴らしい。ブラジル出身で2008年にバルセロナに移住した女性ヴォーカリスト/打楽器奏者ジャブー・モラレス(Jabu Morales)を中心とするバンドは、ブラジル、アンゴラ、そしてカーボベルデというルゾフォニア(ポルトガル語圏諸国)の音楽文化を結び、そこに地中海沿岸の伝統音楽の影響も加え、とても面白い作品を作り上げた。

アルバムタイトルはバンドがその軸とする3つの精神性、すなわち「Sagrado」(神聖)、「Liberdade」(自由)、「Valentia」(勇気)から先頭の2文字ずつをとって名付けられている。3部構成となっており、神聖なものとの繋がりを求める(1)〜(3)、自由や人生を讃え祝祭感に満ちた(4)〜(6)、そして人種差別や不正、植民地主義への抵抗の勇気を歌う(7)〜(9)と明確なテーマを持つ。楽曲はブラジル北東部のマラカトゥやフレーヴォ、アンゴラのキゾンバやセンバ、さらにはジャマイカのレゲエ、イタリアやギリシャの伝統音楽などから幅広く影響を受けつつ、それらを自然に融合しており、アルバム一枚の中でも様々な表情を見せてくれる。

(4)「Eu Me Quero Mais」

バンドのメンバーはジャブー・モラレスのほか、イタリア出身のアコーディオン奏者/アレンジャーのアルベルト・ベクッチ(Alberto Becucci)、ギリシャ系イタリア人のパーカッション奏者ティモテオ・グリニャーニ(Timoteo Grignani)、アフリカのグルーヴとフラメンコを専門とするアンゴラ出身のギター奏者リカルド・クインテイラ(Ricardo Quinteira)、アンゴラ出身の打楽器奏者/DJのワルター・マルティンス(Walter Martins)、ブラジル音楽に造詣の深いイタリア人ベース奏者のフランチェスコ・ヴァレンテ(Francesco Valente)。ポルトガル語圏だけではないメンバーによる共鳴が、彼らの文化的に複雑に絡み合った音楽を作り上げることに寄与していることは間違いない。

(7)「Kikola n’goma」

ゲストもツボを押さえている。ブラジル北東部出身の実力派女性SSWジュリアナ・リニャレス(Juliana Linhares)、アンゴラのセンバの巨匠である男性SSWパウロ・フローレス(Paulo Flores)、そしてポルトガルの男性歌手で2017年にユーロヴィジョン・ソング・コンテストで優勝したサルヴァドール・ソブラル(Salvador Sobral)までもがアルバムにゲスト参加している。

Ayom :
Jabu Morales – percussion, voice
Alberto Becucci – accordion, synths, piano
Ricardo Quinteira – guitars, tres cubano, voice
Francesco Valente – bass
Timoteo Grignani – percussion, voice
Walter Martins – percussion, drum pads, voice

Featuring :
Juliana Linhares – voice (4)
Henrique Albino – brass arrangement and ensemble (4)
Salvador Sobral – voice (10)
João Silva – violins and arrangement (1, 10)
George Robarts-Arnold – tuba (6)
Diogo Duque – brass arrangement and trumpet (7)
Micael Pereira – trumpet (7)
Junior Maceió – tenor saxophone, soprano saxophone (7)
Ruben da Luz – trombone (7)
Sasha Agranov – cello (2, 3)
Paulo Flores – voice (7)

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