カメルーンをルーツに持つベルギーの女性コラ奏者/SSWルビアナ、音楽の本質を捉えた傑作新譜

Lubiana - Terre Rouge

カメルーンの真紅の土にインスパイアされたルビアナの新作

カメルーンとベルギーのハーフであり、世界的に見ても珍しい女性コラ奏者/シンガーソングライターのルビアナ(Lubiana)の新譜『Terre Rouge』が素晴らしい。アルバムのタイトルはフランス語で“赤い大地”を意味する。それは彼女が幼少期から毎年家族とともに訪れた父の故郷アフリカ・カメルーンの真っ赤な土の色の記憶であり、コラの繊細な音に乗せて歌うその声にはアフリカへの強い望郷の想いが滲む。

アフリカの女性たちを称える歌(2)「Farafina Mousso」は今作を語る上で避けられない名曲だ。楽曲自体はシンプルな構成ながら、魂に響く歌や歌詞、演奏はまさに音楽の“本質”と言えるだろう。ルワンダ系フランス人の男性ラッパー、ガエル・ファイユ(Gaël Faye)をフィーチュアし、純朴で瑞々しい美しさを湛える。これは女性たちへの賛歌であると同時に、アフリカの自然や人々、その文化の美しさを歌う曲でもある。

バンバラ語で「アフリカの女性」を意味する(2)「Farafina Mousso」。MVはルワンダで撮影された。

(5)「La Blanche」(白)は、混血である彼女のアイデンティティーについての歌。カメルーンではその肌の色により好奇の目で見られた彼女は、混血の人々が自然と受け入れられることは人類の未来であり希望だと考えている。

(7)「Mali」には今夏の突然の訃報も記憶に新しいマリのコラの巨匠トゥマニ・ジャバテ(Toumani Diabate, 1965 – 2024)がゲスト参加しコラを弾いている。伝統的に“女人禁制”で男性の楽器であったコラを演奏することについて、ルビアナは「伝統的な楽器を演奏するということは、実際には流行遅れのものは何もないという証明でもある」と語り、トゥマニ・ジャバテという名手の“未だ残る慈悲深いオーラ”が彼女自身これから先もコラの演奏を続けたいと思わせてくれているのだと語っている

(10)「Ancestors」

Lubiana 略歴

ルビアナ(本名:Lubiana Kepaou)はベルギー人の母とカメルーン人の父の間に、1993年にベルギーの首都ブリュッセルで生まれた。音楽家の家庭のため彼女自身も幼い頃から音楽に触れ、将来は歌手になりたいという夢を抱いていた。

8歳の頃から段階的にピアノ、ギター、サックス、音楽理論を学び始め、ルーヴェンの音楽院に入学し、ジャズ・ヴォーカルを専攻した。17歳の時にオーディション番組「ヴォイス・ベルギー」に出場し、結果的に準決勝で敗れることとなったが、そのときの多くの人々からの注目は彼女にとって忘れ得ぬ体験となった。その翌年2018年、彼女はセネガルのスター、ユッスー・ンドゥール(Youssou N’Dour)のヨーロッパツアーのブリュッセル公演で前座を務めている。

2020年に最初のEP『Lubiana』をリリース。さらに翌年にはフルレンス・アルバム『Beloved』をリリース。今作『Terre Rouge』はよりアフリカというルーツに寄り添った作品となっている。

関連記事

Lubiana - Terre Rouge
Follow Música Terra