北アフリカにルーツを持つSSW/チェリスト、ネスリーヌ アラビア語とフランス語で歌う物語

Nesrine - Kan Ya Makan (Once Upon a Time)

SSW/チェロ奏者ネスリーヌ新譜『Kan Ya Makan』

フランス育ちのアルジェリア系チェリスト/歌手/作曲家のネスリーヌ(Nesrine)の新作『Kan Ya Makan (Once Upon a Time)』がリリースされた。ジャズ、北アフリカの伝統音楽、西洋クラシック音楽、R&Bなどか混合する個性的で非常に豊かな色彩を持った作品だ。

全曲がネスリーヌの作詞作曲で、歌詞はフランス語とアラビア語で歌われる。短いプレリュードのあとの(2)「Ya Lil」はどこかアンニュイな雰囲気のフランス語で歌われ、つづくアラビア語で“人生”を意味する(3)「Dunia」は、幼少期から現在までの彼女の人生を歌っている。タイトル曲(5)「Kan Ya Makan」はアラビア語で物語の冒頭の定番である“昔むかし”のような意味で、アラビアンナイトのような抒情が漂う。チェロソナタとセルジュ・ゲンスブールが混ざり合い、フランス語とアラビア語に溶け込む(8)「Bonnie and Clyde」も今作の象徴的な1曲。

(2)「Ya Lil」

サウンド面では現代的で洗練されており、ネスリーヌの声とチェロを中心にプログラミングも含め丁寧に構築されている。音楽的な派手さはなく、良い意味で注意深く抑制された音が心地よい。

(5)「Kan Ya Makan」

彼女は近年社会問題となっている移民問題についてこのように触れている
「祖父がいつかアルジェリアを離れてフランスに来なかったら、今の私は存在していなかったでしょうし、今の音楽も作っていないでしょう。リスナーには、人が国から国へ移動することは、基本的に問題ではなく、素晴らしいことだと感じてもらいたいのです。現在の政治的議論は、極端なものばかりです。それでは何も解決しないのです」

Nesrine 略歴

ネスリーヌ(本名:Nesrine Belmokh, アラビア語表記:نسرين بلموخ)は1982年にフランス北部のドゥエーに生まれた。家系は北アフリカのアルジェリア出身で、彼女の両親は中東とマグレブ諸国のアーティストの演奏を主催する文化協会を運営しており、彼女もまた幼少期はアラブ・アンダルシア音楽と北アフリカの伝統音楽に夢中になり、6歳のときにはアルジェリアのミュージカル・ショーにも出演したという。

その後にマルセイユ、リヨン、ジュネーブでクラシック・チェロを学び、西洋音楽への見識を深めた。名指揮者のロリン・マゼール(Lorin Maazel, 1930 – 2014)はネスリーヌを自らのオーケストラに招き入れ、彼女は8年間そこに在籍した。ほかにシルク・ドゥ・ソレイユのプログラムなどに参加し、豊かな音楽的経験を積んだ。

2015年にスペインの打楽器奏者ダビド・ガデア(David Gadea)、そしてフランスのチェロ奏者マチュー・サグリオ(Matthieu Saglio)に出会い、トリオ「NES」を結成。ドイツの名門ACTレーベルよりファーストアルバム『Ahlam』を2018年にリリースし高い評価を得た。

2020年に初のソロ作『Nesrine』をリリース。今作『Kan Ya Makan (Once Upon a Time)』はソロとして2枚目のアルバムとなる。

Nesrine – vocals, cello
Vincent Huma – guitar
David Gadea – percussion
Swaéli Mbappe – bass, Moog
Manel Belmokh – background vocals
Imène Belmokh – background vocals
Leïla Guinoun – background vocals

Nesrine - Kan Ya Makan (Once Upon a Time)
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