フランスの革新的ベース奏者による新譜『Blue Maqam』
フランスのベース奏者、ルノー・ガルシア=フォン(Renaud Garcia-Fons)の2024年新譜『Blue Maqam』は、娘でシンガーのソレア・ガルシア=フォン(Solea Garcia-Fons)をフィーチュアしたカルテットによってアンダルシアからアナトリアに至る地中海周辺音楽、さらには中東やインドまでの種類豊かな音楽を独自のベースを軸に表現する優れたアルバムだ。
ルノー・ガルシア=フォンはピッツィカートからアルコまで、独特のテクニックで幻惑的な音色を奏でる。彼の5弦コントラバスが発する独特の粘り気、ざらつき、木の匂いと温もりを含んだ音が、旅情香る無国籍的な彼の楽曲のなかに流れ出すとき、それは強い魔力を感じさせるほどの魅力を放つ。今作では初めて娘のソレア(1993年生まれ)とアルバムで共演しており、声楽を学んだと思われる彼女の素晴らしい声は父のベースの上で弾けるようにスキャットし、軽やかに舞うように歌われる。
バンドには他に二人の重要なメンバーもいる。ヴィブラフォンとマリンバを叩くステファーヌ・カラッチ(Stéphane Caracci)、そしてドラムス/パーカッションのジャン=リュック・ディ・フラヤ(Jean-Luc di Fraya)は父娘の音楽空間を華やかに拡張し、その魔法をより強いものへと変えてみせる。
Renaud Garcia-Fons 略歴
ルノー・ガルシア=フォンは1962年フランス・パリ生まれ。家系はスペイン系。
5歳でピアノを始め、8歳でクラシックギターに転向、10代でロックに傾倒し、16歳でコントラバスに落ち着いた。パリ音楽院で学び、シリア出身の名コントラバス奏者フランソワ・ラバト(Francois Rabbath, 1931 – )に師事し、彼から独特のアルコ奏法を含む多くのことを学び、今も彼からの音楽的な影響は強く残っている。
彼はトランペット奏者のロジェ・ゲラン(Roger Guérin, 1926 – 2010)のバンドに加入し、その後、交響楽団、ジャズグループ、トリオなど多くのコラボレーターと共演した。1987年から1993年にかけて、フランスの前衛的コントラバス・アンサンブル「L’Orchestre de Contrebasses」に所属。
長く輝かしいキャリアの中でジャズ、クラシック、さらには地中海の伝統音楽や中東のマカームといった幅広い音楽を吸収。フランスを代表するベーシストとしてその名を馳せている。
Renaud Garcia-Fons – double bass
Solea Garcia-Fons – vocal
Stéphane Caracci – vibraphone, marimba
Jean-Luc di Fraya – drums, percussion