ギターとチェロ、魔法のように美しい。キケ・シネシ&アストリッド・モトゥーラ『La Magia』

Quique Sinesi & Astrid Motura - La Magia

アルゼンチンの至高デュオ、キケ・シネシ&アストリッド・モトゥーラ

アルゼンチンを代表するギタリストのキケ・シネシ(Quique Sinesi)が、同国のチェリストのアストリッド・モトゥーラ(Astrid Motura)とのデュオで新譜『La Magia』を発表した。収録の7曲はすべてキケ・シネシの作曲で、純粋で淀みのない、彼らしい澄み切った美しい音楽をたっぷりと堪能できる作品となっている。

アルバムのレコーディングは2018年に始まったというから、2025年のリリースまで長い道のりを歩んできた作品のようだ。デュオでのツアー、パンデミックによる活動の中断などを経て、2022年、2024年にも録音が行われた。

アルバムの幕開けはとても美しい旋律を持った楽曲(1)「El río」。過去には歌手マカレナ・ロブレド(Macarena Robledo)とのアルバム『Cielos』(2022年)で歌入りで収録された曲だが、今作ではアストリッド・モトゥーラによるチェロがその音色の深みによって新たな息吹を吹き込んでいる。キケ・シネシの卓越したギターはいつものように自由で解放的。アストリッドのソロはゆったりとした川(el rio)の流れのようで、キケ・シネシのソロはその川の中を自在に泳ぐ魚たちのよう。

(4)「La magia está dentro tuyo」(魔法はあなたの中にある)も素晴らしい曲だ。豊かに絡み合う7弦ギターとチェロの弦の響きは、誰もが心の中に持つ繊細な記憶を呼び覚ます。

(4)「La magia está dentro tuyo」

Quique Sinesi 略歴

キケ・シネシは1960年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれのギタリスト/作曲家/編曲家で、アルゼンチン音楽界において重要な存在として知られている。幼少期からギターを手にし、1980年代からプロとしての活動を始め、フォルクローレの巨匠アリエル・ラミレスのグループで演奏した後、ソロ活動やコラボレーションを広げてきた。

音楽的ルーツはタンゴ、フォルクローレ、ジャズに深く根ざしており、特に7弦ギターを用いた演奏で国際的な評価を得ており、1996年に発表したアルバム『Cielo Abierto』の表題曲「Cielo Abierto(澄みきった空)」はクラシックギターの定番曲として多くのギタリストによって演奏されているほか、ピアニストのパブロ・シーグレル(Pablo Ziegler)と共演した2003年のアルバム『Bajo Cero』ではラテングラミー賞も受賞している。

Astrid Motura 略歴

アストリッド・モトゥーラはアルゼンチン出身のチェリストで、クラシック音楽の訓練を受けつつ、タンゴやフォルクローレといったアルゼンチンの伝統音楽にも精通している。

彼女のキャリアは比較的新しく、クラシック音楽の教育を受けた後、アルゼンチンのルーツ音楽に興味を持ち、チェロを伝統的な枠を超えて活用するスタイルを模索した。タンゴやミロンガの情感をチェロで表現する技術を磨き、キケ・シネシとの共演によってその才能が注目されるきっかけとなった。

クラシックの技法とアルゼンチンの伝統音楽を融合させる点で、ヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)やアニャ・レヒナー(Anja Lechner)のようなチェリストからの影響が感じられる一方で、独自の感性を探求。キケ・シネシとの『La Magia』のリリース以降、さらなる躍進が期待されている。

Quique Sinesi – guitar
Astrid Motura – cello

関連記事

Quique Sinesi & Astrid Motura - La Magia
Follow Música Terra