音楽的不綺語を体現するアルゼンチンの19歳女性トリオ・TRÍADA。デビューEPで見せた原石の輝き

TRÍADA - De Versiones y Alma

ブエノスアイレスのポスト・ボッサ新星、TRÍADA デビュー作

アルゼンチンの19歳の女性3人によるアコースティック・ポップ/ボサノヴァのトリオ、トリアーダ(TRÍADA)が話題となっている。いずれもカヴァー曲で構成されたデビューEP『De Versiones y Alma』は6曲収録・計14分と短いものの、その選曲のセンスの良さ、ヴォーカルとコーラス、ガットギターとパーカッションを中心とした穏やかで程よい緩さが心地よく、多くのリスナーをこの若いトリオの世界観に惹き込むだろう。

EPは古典的な名曲(1)「Bésame Mucho」(べサメ・ムーチョ)で始まる。メキシコの少女コンスエロ・ベラスケス(Consuelo Velazquez, 1916 – 2005)がわずか17歳で書き、世界的な大ヒットとなった曲。TRÍADAのカヴァーには音楽的にトリッキーなリハーモナイズやリズムの変換などはないが、シンプルながら妙な訴求力のある作品へと仕立て上げている。

(1)「Bésame Mucho」

(2)「Sale La Luna」は英国のSSW、リアナ・フローレス(Liana Flores)の2019年のヒット曲「Rises the Moon」をスペイン語でカヴァーしたもの。キーこそ変更されているがリズムも編曲も原曲に忠実で、コーラスや“雰囲気”にTRÍADAとしてのアイデンティティが感じられる。これはレイヴェイ(Laufey)やジョン・ローズボロ(John Roseboro)ら、ポスト・ボッサと呼ばれるアーティストたちの潮流にも乗る。

リアナ・フローレスの「Rises the Moon」のスペイン語カヴァー(2)「Sale La Luna」

(3)「O Pato」(アヒル)はブラジルの“ボサノヴァの神様”ジョアン・ジルベルト(João Gilberto, 1931 – 2019)が歌い、ボサノヴァの代表的な曲として有名になった名曲。ジェイメ・シルヴァ(Jayme Silva)とネウザ・テイシェイラ(Neuza Teixeira)によって書かれたユーモアのある可愛らしい曲で、今作でのTRÍADAのカヴァーはドメスティックな雰囲気のコーラスも効果的だ。

ジョアン・ジルベルトが歌ったことで有名な(3)「O Pato」

(4)「Rompí」はウルグアイのSSW、ソフィア・アルベス(Sofía Alvez)のアルバム『Ventilar』(2018年)に収録された曲のカヴァー。これも原曲に忠実に、そこからオリジナリティを加えていく手法で明るくも切ない雰囲気に仕上げている。

ソフィア・アルベスのカヴァー(4)「Rompí」

(5)「Canción Para Bañar La Luna」はアルゼンチンの詩人/作曲家マリア・エレナ・ワルシュ(Maria Elena Walsh, 1930 – 2011)の代表曲。子ども向けの歌や絵本で知られ、軍事独裁政権への抵抗など政治的なメッセージを含む生き様から“生きた伝説、文化的英雄、そしてほぼすべての子供時代の象徴”と称される作曲者への敬意を表すカヴァーだ。

TRÍADA プロフィール

トリアーダはアルゼンチン・ブエノスアイレスでパフォーミングアーツの学校に通っていた時に出会った3人の友人によって結成さた。グループ名は西洋音楽の基本である三和音=トライアドや、3人の絆を示している。
2023年からセルフ録音を始め、ソーシャルメディアを通じてグローバルなファンベースを築き上げていった。当初はプログレッシヴ・ロックやポストパンクにも挑戦していた彼女たちだが、次第に自分たちを形成した音楽であるフォルクローレ、ジャズ、ボサノバ、アコースティックに深く没入していった。影響を受けたアーティストとしてホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler)、ロス・パンチョス(Los Panchos)、グスタボ・ペーニャ(Gustavo Peña)、ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)、リタ・パイエス(Rita Payés)などを挙げている。

TRÍADA :
Diamela Spina – percussion, vocal
Aylu Reynoso – guitar
Julia Percowicz – vocal

TRÍADA - De Versiones y Alma
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