北欧ジャズの生き字引、テリエ・ゲヴェルト 珠玉の未発表音源集『Then and Now』

Terje Gewelt - Then and Now

テリエ・ゲヴェルトの物語

1960年にノルウェーのオスロで生まれ、小さな港町ラルヴィクで育ったベーシスト/作曲家テリエ・ゲヴェルト(Terje Gewelt) 。10歳のときにギターを手にし弦の振動に心を奪われ、14歳でエレクトリックベースに魅了され、17歳でアコースティックベースと運命的な出会いを果たした彼はその後渡米し名門バークリー音楽大学でジャズを学び、ジャコ・パストリアスやデイヴ・ホランドに個人指導を受け、その技と感性を磨いてきた。

故郷に戻ったテリエは、その長いキャリアの中でジャズの脈動を静かに支えてきた。ビリー・コブハムのドラムが雷鳴のように響くステージで、トミー・スミスのサックスが空を切り裂く瞬間で、テリエのベースはまるで大地の鼓動のように彼らの音と一体となった。ミシャ・アルペリンやジョン・サーマンといった鬼才たちとも共演し、RCA、Blue Note、ECMといった名門レーベルのアルバムにその名を刻んだ。70枚以上の作品に参加し、彼のベースはジャズの歴史に確かな足跡を残してきた。

テリエの音楽を映し出す未発表音源集

テリエが弾く音は、単なるベースギターやコントラバスではなく、“物語”だった。彼のフレットレスベースの歌うような音色は、ノルウェーのフィヨルドの静けさを、アメリカの喧騒を、そして彼自身の内なる旅を語った。

1998年から2022年にかけて録音された未発表曲を集めたアルバム『Then and Now』は、そんなテリエ・ゲヴェルトの人生の断片を映し出す。

(3)「August」

彼の実験的で好奇心旺盛な側面を象徴するテリエ・エヴェンセン(Terje Evensen)とのデュオによる(1)「The Duldrums」。
スウェーデンのジャズ・ギタリスト、スタファン・ヴィリアム=オルソン(Staffan William-Olsson)とのピュアなブルースの対話(2)「Schultzes gate blues」で見せる青さ。

カーリン・クローグ(Karin Krog)が歌うジョニ・ミッチェルのカヴァー(4)「Both sides now」の、痛みを伴う思い出と、その愛おしさ。アルフレッド・ヤンソン(Alfred Janson)アコーディオンは美しく震えている。

とろけるようなジョージ・ガゾーン(George Garzone)のテナーサックスが沁みるホレス・シルヴァーのカヴァー(5)「Peace」。“足るを知る”という言葉を思い出させてくれる、バスクラリネットとピアノとの豊かな時間が流れる(7)「Sleepwalking」。そして、テリエ・ゲヴェルト自身によるティンパニとベースの対話(8)「Initiation」。
──すべてが、彼の音楽の旅の証だ。

(4)「Both sides now」

Terje Gewelt – electric upright bass (1), electric bass (2, 6), acoustic bass (3, 4, 5, 7, 8), timpani (8)

Terje Evensen – electronics, drums (1)
Staffan William-Olsson – electric guitar (2), acoustic guitar (4)
Adam Nussbaum – drums (2)
Christian Jacob – piano (3)
Karin Krog – vocal (4)
Alfred Janson – accordion (4)
George Garzone – tenor saxophone (5)
Bjørn Klakegg – electric guitar (5)
Roger Johansen – drums (5)
Jason Rebello – piano (6)
Billy Cobham – drums (6)
John Surman – bass clarinet (7)
Erlend Slettevoll – piano (7)

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