ノンストップで心踊るフラフラ・ゴスペル!ガーナ北部発、俄かに注目を浴びるアログテ・オホの2nd

Alogte Oho & His Sounds of Joy - O Yinne!

フラフラ・ゴスペルの騎手 Alogte Oho & His Sounds of Joy

ガーナ北部ボルガタンガのフラフラ・ゴスペルのシーンを代表するバンド、アログテ・オホ&ヒズ・サウンズ・オブ・ジョイ(Alogte Oho & His Sounds of Joy)の2ndアルバム『O Yinne!』(2023年)が最高だ。絶え間なく降り注ぐアフロ・フューチャリスティックな重厚なグルーヴ、力強いブラスや女性コーラス、そしてアフロビート、ハイライフ、ジャズやR&B、レゲエなどを自由に飲み込んだ音楽観が生み出すエネルギーは活力と喜びに満ちている。

彼らの音楽のキーワードとなるフラフラ・ゴスペル(Frafra Gospel)とは、ガーナ北部のフラフラ民族1の音楽で、キリスト教の宣教師が持ち込んだゴスペルとフラフラ族の伝統音楽が融合したもの。ペンタトニック音階やポリリズム、力強い女性コーラスを特徴とし、主に干魃や貧困といった地域の経済的・環境的な問題に対する希望を歌う。「ゴスペル」ときいて一般的に想起される、黒人霊歌を起源とするキリスト教会音楽とは似て異なるものだ。

バンドは男性シンガーソングライターのアログテ・オホ(Alogte Oho)を中心とし、コーラス隊にはいずれもソロ・アーティストとしても類稀な才能を持つ女性歌手であるリジー・アマリエンガ(Lizzy Amaliyenga)、パトリシア・アドンゴ(Patricia Adongo)、フローレンス・アドーニ(Florence Adooni)を擁し、軽やかにグルーヴするブラス入りのバックバンドが支える編成。アルバムにはとても印象的な曲が並び、ノンストップの勢いで進行する。

本作の最初の音楽的ハイライトは(2)「La Ka Ba’A」だ。エレクトリック・ピアノやシンセ、ブラス、ドラムスやパーカッションに彩られた魅惑のサウンドの上で展開するアログテ・オホのヴォーカルと女性コーラスは言葉に言い表すことの難しい、感性を刺激する感動的な素晴らしさ。音楽的には割と単調に進むのかと思いきや予想外の転調を差し込んできたり、コズミックなサウンドの工夫といった小技もかなり効いていて、リスナーを彼らの世界観に一気に惹き込む名曲となっている。

(2)「La Ka Ba’A」のMV。

サイケデリックなハイライフ(3)「This Is Bolga!」、夢見心地のアコースティック・ギターを中心に据えた(4)「Te Bola Be?」、レゲエのアフリカの見事な融合(5)「Yinne Te Yelle Be」を経て、ラストのブラスを中心としたレゲエ(8)「Gure Yose Me」まで、多幸感に満ちたサウンドは唯一無二と言って良いだろう。

(3)「This Is Bolga!」

ガーナ南部のハイライフやアフロビートに比べ国際的な知名度が低いフラフラ・ゴスペルだが、彼ら Alogte Oho & His Sounds of Joy はフラフラの伝統的なリズムとゴスペルのスピリチュアルなメッセージを現代的なアフロビートやレゲエの要素と融合させることで、文化的な橋渡しの役割を果たしている。

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  1. フラフラ族(Frafra people、またはGurunsi)…アフリカ西部のガーナ北部やブルキナファソ南部に暮らす民族。歴史的に彼らは中央集権的な王国を築くことは少なく、小規模な村落単位で首長(Naba)を中心とした自治的なコミュニティを形成してきた。19世紀から20世紀初頭にかけて、イギリスやフランスの植民地支配下に置かれたが、彼らの伝統的な生活様式や文化は強く残っている。 ↩︎
Alogte Oho & His Sounds of Joy - O Yinne!
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