NYで生まれた奇跡の魔法。アダム・ニーリー&ラウ・ノア、親密なデュオの対話が紡ぐ秘密の音楽│Musica Terra

NYで生まれた奇跡の魔法。アダム・ニーリー&ラウ・ノア、親密なデュオの対話が紡ぐ秘密の音楽

Adam Neely & Lau Noah - The Way Under

アダム・ニーリー&ラウ・ノア 親密なデュオEP

YouTubeでの活動などを通じて、ジャズの領域だけでなく多様なファンを獲得した人気ベーシストのアダム・ニーリー(Adam Neely)と、カタルーニャ出身で独自の現代ギター音楽を探求し、ジェイコブ・コリアーやシルビア・ペレス・クルス、シャイ・マエストロといった世界中の音楽家たちと共演するギタリストのラウ・ノア(Lau Noah)が、デュオによるEP『The Way Under』をリリースした。

EPには2分〜3分ほどの短めの楽曲を5曲収録。ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini)作曲の歌劇『トゥーランドット』のアリア(5)「Nessun Dorma」(誰も寝てはならぬ)のカヴァーを除き、すべてラウ・ノアまたは二人の共作によるオリジナル。すべての曲は淡い映像的な感覚があり、それがとても心地よい。
アダム・ニーリーはラウ・ノアを“音楽界でもっとも守られた秘密”だと紹介している。「無数のコードを使い、まるでたった4つのコードで弾いているかのようにすることが目標なんです。良い物語、良い本のように」と語るラウ・ノアの独創的な和音感覚は、今作でも恐ろしく鋭利だ。

演奏は二人の独創的かつ卓越した作曲技術と演奏テクニックにより、独特の深い絡み合いを見せる。それはファンタジーの物語の中の親密な会話のようで、まるで別世界のような美しさだ。二人の呼吸には独特のルバートがあり、“デュオで音楽を奏でること”の至高を体現している。

(2)「The Way Under」

二人のコラボレーションは2021年から少しずつ始まった。最初はニューヨークのバー、ルナティコ(Bar Lunatico)で。その後2023年に(3)「The Path」のセッション動画がYouTubeに公開され高く評価されたことで、今回のEPに発展したようだ。

この音楽は、ラウ・ノアというアーティストの世界観に、アダム・ニーリーがシンクロナイズすることによって生み出されたと言って過言ではないだろう。ラウ・ノアはこれまでも数多くの世界的ミュージシャンをそのようにして彼女の世界観に自然と引き寄せてきたが、今作はそのもっともディープな事例だ。

(3)「The Path」

ラウ・ノア作曲の(4)「Smoke of Many Fires」はラウ・ノアのヴォイスも交え、まるでクラシック・ギターを弾いているかのような表情豊かなアダム・ニーリーのベースと、ラウ・ノアのガットギターによる二重奏がどこまでも音楽的で美しい。

有名なプッチーニの歌曲(5)「Nessun Dorma」のカヴァーもまた、素晴らしい。ここでもアダム・ニーリーはベースで美しいメロディーを奏で、ラウ・ノアはギターのアルペジオを中心にその旋律にぴったりと寄り添う。

Adam Neely 略歴

アダム・ニーリーはニューヨークを拠点とするベーシスト/作曲家/YouTuber。1988年生まれで、バークリー音楽大学でジャズ作曲を学び、マンハッタン音楽学校で修士号を取得した。彼のYouTubeチャンネルは音楽理論や楽曲分析をエデュテインメント形式で解説し、180万人以上の登録者を誇る。特に「音楽的ミーム」やリズム解析が人気で、ジャズ、ポップ、クラシックの理論を幅広くカバーする。
ベーシストとしては、ジャズやフュージョンを中心に活動し、Sungazerというプログレッシブバンドを主宰。彼はまた教育者としてワークショップやオンライン講座で後進を指導。理論と実践の橋渡し役として、音楽コミュニティに多大な影響を与えている。

Lau Noah 略歴

ラウ・ノアはカタルーニャ出身のギタリスト/シンガーソングライター。1994年生まれで、幼少期からピアノを学んでいたが、ギターは19歳でニューヨークに移住してから数年後の2016年から独学で習得し、スペインとニューヨークで音楽キャリアを築いていった。独自のフィンガースタイルと複雑な和声が特徴で、フォーク、クラシック、ジャズの要素を融合させる。2024年のデビューアルバム『A Dos』は、ホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler)やジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)ら多数の世界的音楽家たちとの共演で注目を集めた。彼女の音楽は、詩的で内省的な物語性を持ち、ライブでは観客との親密な繋がりを重視する。NPRのタイニー・デスク・コンサート(Tiny Desk Concert)への出演や、ニューヨークの会場でのソロ公演などで国際的な評価を得ている。作曲家としては、映画や舞台の音楽も手掛け、多様な表現を追求。現代ギター音楽の新たな可能性を開拓している。

アダム・ニーリーが、ラウ・ノアの天才的ハーモニーについてインタビューと解説をする動画。

Adam Neely – electric bass
Lau Noah – gutiar, voice

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