稀代のSSWラウ・ノア、世界中の最高のミュージシャンとのコラボアルバム『A Dos』ついにリリース

Lau Noah - A Dos

1994年カタルーニャ生まれのシンガーソングライター/ギタリストのラウ・ノア(Lau Noah)が世界中のトップミュージシャンとのコラボレーションを収録した新譜『A Dos』をリリースした。

ラウ・ノアは2019年にカタルーニャ人として初めてタイニーデスク・コンサートに出演し、カタルーニャらしい柔らかなソング・ライティングや対位法を効果的に用いたギターのアレンジなどが絶賛された。2021年に待望のソロ・デビュー・アルバム『3』をリリース。すべてギターでの弾き語りという構成で、彼女の個性的で魅力ある才能を知らしめた。

今作はそんな彼女が、ロンドン、マドリード、バルセロナ、ロサンゼルス、ニューヨークを周りながら約2年間をかけて録音してきた楽曲群。全てが世代も国籍もさまざまなミュージシャンとのコラボレーションとなっており、その相手はジェイコブ・コリアー、ホルヘ・ドレクスレル、シルビア・ペレス・クルス、クリス・シーレ、セシル・マクロリン・サルヴァント、サルヴァドール・ソブラルなど超豪華だ。

楽曲はすべてラウ・ノアの作詞作曲。声とギターを中心としたあまりに美しく魅力的な楽曲、演奏のアルバムであり、ここではすべての収録曲について簡単な解説を加えたい。

『A Dos』アルバム全曲紹介

(1) Aunque suene bonito

アルバムの幕開けはグアテマラのSSWガビー・モレノ(Gaby Moreno, 1981 – )とのコラボレーション。ガビー・モレノは数年前にタイニーデスク・コンサートの審査員を務め、その際に出演者としてエントリーしていたラウ・ノアの音楽を初めて聴き、彼女に投票したのだという。この時は残念ながらラウ・ノアが出演権を得ることはできなかったが、後日別の機会でタイニーデスクに出演したことは前述のとおり。2021年にガビーは自身のグアテマラでのコンサートのステージにラウ・ノアを招いており、この頃からの縁が今作での共演に繋がった。

(2) Lesser men would call it love

2023年11月8日にシングルで先行リリースされた「Lesser men would call it love」はアメリカのマンドリンの名手であるクリス・シーレ(Chris Thile, 1981 – )とのデュオ。カントリー・ミュージックのエッセンスも含んだシンプルなコード進行の楽曲。英語で歌われ、二人の美しいハーモニーもさることがながら、クリスの超絶技巧のマンドリン・ソロ、そして負けず劣らず細やかなテクニックで応戦するラウ・ノアのギターの音も素晴らしい。

クリス・シーレとのデュオ「Lesser Men Would Call It Love」

(3) Que Pasen Cosas

「Que Pasen Cosas」はカタルーニャを代表するシンガー、シルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz, 1983 – )との共演。陰影を帯びた風情のある楽曲で、二人の女性ヴォーカルの感情も豊か。フレンチホルンの四重奏も楽曲に深みをもたらす。
シングルは2023年10月18日に先行リリースされた。

同郷カタルーニャを代表するSSWシルビア・ペレス・クルスとの共演

(4) If a Tree Falls In Love With a River

「If a Tree Falls In Love With a River」はイギリス出身の世界的人気ミュージシャン、ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier, 1994 – )とのデュオで、このシングルは2023年5月19日にリリースされた。ラウ・ノアは2021年にブルーノート・ニューヨークで彼との共演ライヴも行っており、それ以来の共演だ。
歌は英語で歌われ、ラウ・ノアにしては比較的シンプルな演奏。ジェイコブ・コリアーとのハーモニーが美しい。

ジェイコブ・コリアーとのデュオ「If a Tree Falls In Love With a River」

(5) La soledad

スペインのフラメンコ・シーンを代表する若手歌手アンヘレス・トレダーノ(Angeles Toledano, 1995 – )とのコラボレーション「La soledad」は今作の中でもっともスペインを感じる楽曲だ。若手フラメンコ・ギタリストのベニート・ベルナル(Benito Bernal, 1998 – )も演奏に参加しており、卓越したソロで楽曲を彩る。

「La soledad」

(6) Home

イスラエルのジャズ・ピアニスト、シャイ・マエストロ(Shai Maestro, 1987 – )との共演は美しいワルツ曲。今作中唯一、シャイのピアノとラウ・ノアのギターのみのインストゥルメンタル曲となっている。ラウ・ノアはギタリストのイダン・バラス(Idan Balas)やヨアヴ・エシェド(Yoav Eshed)など、イスラエルのミュージシャンとの繋がりも深い。

(7) Libertad

ウルグアイの巨匠ホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler, 1964 – )とのデュオで演奏される「Libertad」は2023年6月30日リリース。メロディは詩的で、その美しさは特筆ものだ。やはりラウ・ノアの歌にはスペイン語が似合う。二人の演奏はライヴ録音で収録されているが、後録りのストリングスもアレンジに情緒を与えている。二人の歌は中盤まではユニゾンだが、ハミングのあと、終盤は見事なハーモニーに昇華される。

ホルヘ・ドレクスレルとの共演「Libertad」

(8) Wooden chair

ポルトガル出身、2017年のユーロビジョン・ソングコンテストで優勝した欧州を代表する歌手サルヴァドール・ソブラル(Salvador Sobral)との共演はスペイン語でもポルトガル語でもなく、英語。曲調も米英のフォークを思わせる。ラウ・ノアのガットギターと、2人の素朴で温かみのある歌声が素敵すぎる。

ポルトガル出身の歌手、サルヴァドール・ソブラルとのコラボ「Wooden chair」

(9) Siete Lágrimas

2023年12月12日リリースのシングル「Siete Lágrimas」は、グラミー賞の常連受賞者である現代最高峰の女性ジャズ・ヴォーカリストセシル・マクロリン・サルヴァント(Cécile McLorin Salvant, 1989 – )との共演。セシル自身はアメリカ生まれだが、母はフランス人、父はハイチ人。ここではスペイン語の歌詞をラウ・ノアとともに静かに歌い上げる。

(10) Ode To Darkness (The Lighthouse Song)

最後は大勢のオーディエンスが彼女の音楽にコーラスとして参加する。二度とないライヴ・コンサートという魔法のような瞬間を、これほど美しく捉えた録音は他になかなか無いのではないだろうか。


アメリカのラジオ局WBGOは、「ラウ・ノアの音楽は、ある意味カテゴリーを超越しているが、それと同時にさまざまな場所や時代にも属している」と評価している。

今作はラウ・ノアという稀代の音楽家が、魂が呼応する世界中の美しい音楽家たちと作り上げた傑作である。

Lau Noah プロフィール

ラウ・ノア(本名:Laura Caila Puig)は1994年にスペインのカタルーニャ州の都市レウスで生まれ、十代の後半にアメリカ合衆国ニューヨークに移り住んだ。
幼少時はピアノを弾いていた彼女がギターを始めたのは偶然がきっかけだったという。
2016年に友人たちとパトリック・ワトソンのコンサートに行くためにカナダのモントリオールを訪れたが、彼女の分のチケットが確保できなかったためにひとりアパートに残されてしまった。その部屋には2本のギターがあるのみで、他には何もなかった。彼女は仕方なくギターを手に取り、「Pequitas(そばかす)」というタイトルの最初の曲を作ったのだという。これがアーティスト、ラウ・ノアの始まりの物語だ。

彼女はカタルーニャ語、バレンシア語、スペイン語、英語に堪能で、フランス語やヘブライ語を学んでいる。また、音楽だけでなく絵画や写真の趣味にも没頭する。音楽的な影響源としては、クイーン(Queen)、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、バッハ(Bach)、ワーグナー(Wagner)、レディオヘッド(Radiohead)、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)、カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)、ギンガ(Guinga)、マティ・カスピ(Matti Caspi)、シャローム・ハノフ(Shalom Hanoch)、メルセデス・ソーサ(Mercedes Sosa)など幅広く名前を挙げている。

今作にも収録された数々のコラボレーションのほか、2023年秋にはベン・フォールズのヨーロッパツアーでのオープニングアクトを務めるなど世界的に注目が高まってきている。

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