時空を超えるコズミック・グルーヴ傑作!NZの大世帯ジャズコンボ The Circling Sun 圧巻の新譜

The Circling Sun - Orbits

スピリチュアル・ジャズを現代に甦らせる The Circling Sun 新作

ニュージーランドのジャズ・コレクティヴ、ザ・サークリング・サン(The Circling Sun)が2ndアルバム『Orbits』をリリースした。大所帯のバンドとコーラス隊が織り成す、古くて新しいコズミックなグルーヴは前作『Spirits』をさらに超え、また彼らが公言する“Azymuth1へのリスペクト”を体現したようなブラジリアン・テイストの楽曲も多い魅力的な作品だ。

(2)「Mizu」はそのまま日本語の「水」をタイトルに据える。前作でも彼らが愛用するテカポ湖のほとりにある日本食レストラン「湖畔(Kohan)」に捧げた「Kohan」という曲があったが、異文化を積極的に取り入れるスタイルが最も現れた一例。タイトルに反して楽曲はアフロサンバを取り入れたブラジリアン・ジャズ〜アフロ・キューバンのスタイルとなっており、“水の流動性”を象徴する。彼らが敬愛するファロア・サンダース(Pharoah Sanders)が表現した東洋哲学の影響が伺える。そして、何よりもキハーダ2の音はいつだって支配的で強烈だ。

(2)「Mizu」

つづくボサノヴァからの影響を感じさせるゆったりしたグルーヴの(3)「Seki」も面白い。コーラス隊やシンセサイザーも、サックスも、ピアノもパーカッションも自然に混ざり合ってゆく世界──。
ヴィンテージのアナログ機材を用いたライヴ録音へのこだわりが、今作のサウンドにもしっかりと反映されている。昨今のデジタル機材と比較すると到底クリアとは言えない独特のくぐもった音響は、逆説的にスピリチュアルな感覚を強調し、現在と1970年代の間のどこかの時空へとリスナーを強制的に連行する。サックスの音はその時空を引き裂くように鳴り響く。

(5)「Flying」

The Circling Sun :
Cameron Allen – flute, tenor saxophone
Jong-Yun (J.Y.) Lee – flute, alto saxophone, tenor saxophone, baritone saxophone, soprano saxophone, bass clarinet, clarinet
Ben Turua – acoustic bass
Joe Kaptein – piano, Fender Rhodes, synthesizer, guitar
Finn Scholes – trumpet, flugelhorn, vibraphone, tuba, trombone, marimba
Julien Dyne – drums, percussion
Kenny Sterling – additional percussion, synthesizer, choir direction, lyrics

Guests :
John Bell – tenor Horn, cornet (2, 7)
Daniel Ryland – guitar (4)
Cory Champion – Korg MS-20, Buchla Modular Synthesizer
Brandon Haru – Prophet Synthesizer
Semisi Ma’ia’i – choir lyrics (4)

The Love Affinity Choir :
Kenny Sterling
Summer Vee
Crystal Chen
Semisi Ma’ia’i
Abigail Aroha Jensen
Carla Camilleri Samara Alofa
Navakatoa Tekela-Pule
Emily Fe’ao

  1. Azymuth(アジムス)…「Jazz Carnival」や「Fly over the Horizon」といった世界的ヒット曲を放った、ブラジルの伝説級ジャズ・フュージョンバンド。1973年から活動を開始し、メンバーを変えながら2025年現在も活動を続けている。 ↩︎
  2. キハーダ(quijada)…「顎の骨」を意味する、ロバや馬の下顎の骨を乾燥させてできた打楽器で、主にラテンアメリカの音楽で用いられる。“骨”そのものに代わる楽器として、木製のヴィブラスラップ(vibraslap)という代用楽器も広く流通している。 ↩︎

関連記事

The Circling Sun - Orbits
Follow Música Terra