気鋭ギタリスト、ジュリアーノ・カマラ 渾身のソロデビュー作
ミナスジェライス州チラデンテス出身の7弦ギタリスト/作曲家のジュリアーノ・カマラ(Juliano Camara)による素晴らしいソロデビュー・アルバム『Cabeças Flutuantes』が届いた。アルバムにはセルジオ・サントス(Sergio Santos)やハファエル・マルチニ(Rafael Martini)ら総勢26名の音楽家が集い、ミナスらしい豊かな複雑性と躍動感を兼ね備えた音の世界が広がる。
アルバムのタイトル「浮遊する頭たち」は、ジュリアーノ曰く“多様な思考が同時に存在する状態”なのだといい、“抽象的かつ具体的”、“激しくかつ控えめ”、“内密的かつ華麗”といった対極的な要素を音楽で表現しているものだという。“頭たち”とはアイデンティティ、民族、人々の生活、そして文化の多様性の象徴でもあり、夢と覚醒、現実と幻想、堅固な地平と幽玄な空間の間を揺れ動く人間の心のメタファーでもある。今作はこうした知的なレトリックをコンセプトとし、多くのミュージシャンやシンガーの参加によってそれぞれの楽曲ごとに異なる結晶を生み出しながらも、見事に統一された世界観で表現している。
収録された全10曲はすべてジュリアーノ・カマラのオリジナル。
彼がエドゥアルド・ピニェイロ(Eduardo Pinheiro)と組んで活動したギター・デュオ、「グアンデュオ(Guanduo)」の過去作『Inventos』(2015年)からアレンジを大きく変えた再演曲である(1)「Orixá da Sobrevivência」で幕を開き、作編曲家としての彼の才能を余すところなく発揮した作品が並ぶ。
ショーロからの影響が強い(3)「Passando a Faixa」や北東部の土着音楽の影響を窺わせる(5)「Baru」といった楽曲から、南米のクラシック・ギターの巨匠アグスティン・バリオス・マンゴレ(Agustín Barrios Mangoré)に捧げられ、マイラ・マンガ(Maíra Manga)とセルジオ・サントスが歌う壮大な歌曲(9)「Mangoré, Terra Sem Mal」、さらにはギンガ(Guinga)からの影響が表れた独創的で美しいメロディーを持った(4)「O Caçador de Moinhos」など、どの曲も素晴らしく滋味深い。
今作は数年前に共演したブラジルを代表する7弦ギタリストであるヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)に、ジュリアーノが自作の曲を聴かせたことが制作のきっかけとなった。ヤマンドゥの反応は「私のスタジオでアルバムをレコーディングしてくれ!」で、その後しばらくはジュリアーノの頭の中ではバレリーナのようにその言葉が踊り続けたという。もはや彼の頭の中で渦巻く音楽は、ギターだけでは到底収まりきらないものだった。それは弦楽器、打楽器、管楽器、アコーディオンにヴォーカル、そして様々なポリフォニーの音が混ざり合ったオーケストラのような音楽であった。
ジュリアーノ・カマラの情熱は、友人である多くのミュージシャンたちの協力と、クラウドファンディングによって実現した。おそらく私たちの耳には、彼がヤマンドゥの言葉に心舞い上がったその瞬間の昂りがほとんどそのまま届けられているに違いない。この作品で示されたアフリカに由来するブラジルの伝統的なリズム、西洋クラシック音楽から伝わった南米音楽の豊かなハーモニー、ジャズに通ずる即興性といった奇跡的な混淆は、そう信じさせるには充分すぎる。