南米と中央アフリカの文化の実験的融合の見事な結実
アレ・ホップ&ティティ・バコルタ(Ale Hop & Titi Bakorta)名義の不思議なエレクトロ・ワールドミュージック『Mapambazuko』が、妙にクセになるサウンドで面白い。これはペルー出身の実験的エレクトロニック・ミュージシャン、アレ・ホップ(Ale Hop)ことアレハンドラ・カルデナス(Alejandra Cárdenas)と、コンゴ出身のギタリスト、ティティ・バコルタ(Titi Bakorta)によるコラボレーション・アルバムで、ウガンダを拠点とする気鋭レーベル「Nyege Nyege Tapes」からリリースされた。ペルーのデジタルクンビアやアフロ・ラテンリズムと、コンゴのダンス音楽であるスークース(Soukous)を融合させており、実験的ながら活気あふれるサウンドスケープが魅力的な一枚だ。
アルバムのリード・トラック(1)「Una Cumbia en Kinshasa」は、タイトル通りクンビアのリズムを基盤にしている。クンビア特有の反復するリズムが、ティティ・バコルタのスークース風ギターと融合。電子的な音響処理とも相まって、伝統と電子音楽の融合を強調している。
スペイン語で“小鳥のダンス”を意味する心踊る(3)「La Danza del Pajarito」、鮮やかなサウンドがトランス状態に誘う(4)「Bonne Année」、スピリチュアルでドープな音楽体験(6)「Nitaangaza」など、良い意味で“奇天烈”という言葉がぴったりな作品だ。
アルバムのラスト3曲にはリミックスを収録している。ケニア人サウンド・アーティストのKMRU、ロンドンを拠点とする中国系マレーシア人DJのフローラ・イン・ウォン(Flora Yin-Wong)が収録曲のリミックスを手掛け、最後はアレ・ホップによるオープニング・トラックのさらにアグレッシヴなヴァージョン(9)「Una Cumbia en Kinshasa (Ale Hop Remix)」で幕を閉じる。
Alejandra Cárdenas 略歴
アレ・ホップ(Ale Hop)ことアレハンドラ・カルデナスはペルー・リマ出身のエレクトロニック・ミュージシャン/作曲家/プロデューサー。クンビア、アフロ・ペルー音楽、フォルクローレといったペルーの豊かな音楽文化が彼女の音楽的基盤となり、2000年代にリマのアンダーグラウンド・ミュージックシーンでキャリアをスタートさせた。エレクトロニック・ミュージックの可能性を探求し、ノイズ、グリッチ、アンビエント、インダストリアルなどの要素を取り入れた実験的な作品を制作。ペルーの伝統的な楽器を電子的に再構築するスタイルを確立している。2010年代にドイツのベルリンに移住し、現地の実験音楽のシーンからも大きな影響を受けている。
Titi Bakorta 略歴
ティティ・バコルタはコンゴ民主共和国キンシャサ出身のマルチ器楽奏者/ギタリスト/シンガーであり、コンゴのスークース(Soukous)やフォークサウンドを現代的に再構築した独自の音楽スタイルで知られている。現在はウガンダの首都カンパラを拠点に活動し、2013年に設立された同地の人気レーベル「Nyege Nyege Tapes」を通じて国際的な注目を集めている。
2023年にデビューアルバム『Molende』をリリース。コンゴのスークースとフォークを基盤にしつつ、サイケデリックなプロダクションや現代的なR&B、ポップの要素を取り入れ話題となった。