多様な文化をひとつの音楽芸術に昇華する Lagon Nwar
2023年にフランスで結成され、“カテゴライズ不可能”と評される独特の音楽性が魅力の4人組、ラゴン・ンワール(Lagon Nwar)のデビュー・アルバム『Lagon Nwar』が面白い。バンド名はフランス語で「黒いラグーン」を意味し、これは異なる文化的背景が交錯する“中間地点”を象徴。メンバーそれぞれのルーツ(フランス海外県レユニオン、ブルキナファソの首都ワガドゥグー、そしてフランス国内のパリ、オルレアン)の交差を表現している。
Lagon Nwarは、4人の個性的なミュージシャンによって構成されている。
クレオール文化に根差した表現を特徴とするレユニオン島出身の女性シンガー、アン・オアロ(Ann O’aro)。
ブルキナファソ出身の打楽器奏者/シンガーのマルセル・バルボネ(Marcel Balboné)。
フランスのジャズシーンで活躍するテナーサックス/シンセサイザーのカンタン・ビアルドー(Quentin Biardeau)。
そしてジャズや即興音楽の分野で知られるベーシストのヴァランタン・セッカーディ(Valentin Ceccaldi)。
こうした異なるルーツを持った4人が織り成す音楽は、レユニオン島の伝統音楽であるマロヤ、アフロジャズ、ヨーロッパの音楽などが融合した独自のサウンドスケープを生み出す。歌詞もレユニオン・クレオール語、フランス語、ムーア語(モシ語)など複数の言語で歌われ、文化的な多様性を示している。
たった4人のアンサンブルだが、そこから生まれる音の情景はその規模を遥かに凌駕する力強さを秘めている。
2025年3月の今作のリリース以降、フランスやレユニオン島でライヴで高い評価を受け、多文化的な物語と情熱的なパフォーマンスでリスナーを魅了するラゴン・ンワール。音楽を通じて境界を越えることを体現する彼らの活動は、今後も注目されるはずだ。
Lagon Nwar :
Ann O’aro – vocal
Marcel Balboné – vocal, drums, percussions, konnî
Quentin Biardeau – tenor saxophone, synthesizer
Valentin Ceccaldi – bass