詩人ホルヘ・エスキンカと共同制作。イネス・ベラスコ芸術の集大成
メキシコ出身でブルックリンを拠点とする作曲家/ドラマー、イネス・ベラスコ（Ines Velasco）が、メキシコの詩人ホルヘ・エスキンカ（Jorge Esquinca, 1957 – ）の詩集『Descripción de un brillo azul cobalto』（英訳：Description of a Flash of Cobalt Blue）にインスパイアされて制作したアルバム『A Flash of Cobalt Blue』。10年の構想と準備を経て、クラウドファンディングで資金を調達。総勢17名のビッグバンドを率いた彼女の活動の集大成であり、傑作と呼ぶに相応しい作品だ。
今作はラージアンサンブル・ジャズと詩の融合による鮮烈な音楽体験を提供する。6曲で構成される約36分のアルバムは、音楽としてのコンテンポラリー・ジャズの枠を超え、文学的深みと文化的共鳴を織り交ぜている。 アルバムの核となるのは、ホルヘ・エスキンカ自身による詩の朗読とヴェラスコのビッグバンド・アレンジの融合だ。エスキンカの声は全曲に登場し、グアダラハラ1で収録されたその朗読は、メキシコの太平洋岸やパリの街を旅する詩の情景を生き生きと伝える。
イネス・べラスコは10年以上前にエスキンカの朗読会で大きな衝撃を受け、その詩の感情的な風景をいつかビッグバンドのダイナミックなサウンドで表現したいという構想を持った。彼女の家族の友人でもあったエスキンカは、その構想に賛同し、共同制作者兼メンターとなり、ベラスコに対して彼女が適切と考える方法で自分の作品を解釈し、音楽を創作することを完全に許可した。彼女は詩のエッセンスを損なわずにジャズの即興性とビッグバンドのスケールを融合させる方法を模索し、2024年にクラウドファンディングを立ち上げてプロジェクトを完成まで導いた。
アルバムに収録された6曲はすべてイネス・ベラスコの作編曲。ポスト・ボップ・ジャズの伝統に根ざしつつ、メキシコの文化的要素を取り入れ、ミニマリストでありながら壮大な音像を作り上げる。とりわけ5本のサックス、4本のトランペット、4本のトロンボーンによる力強いアンサンブルは耳を惹く。参加ミュージシャンはNYを拠点とする若手の注目株が中心で、ドラムスのキム・ジョングク（Jongkuk Kim）、ピアノのアンドリュー・ボウドリュー（Andrew Boudreau）、(3)「This Is The Way Down」のみで参加するヴォーカリストのケイティ・エスラー（Catey Esler）らの演奏にも注目だ。
M. Alex Ramírez – alto saxophone, flute
Gideon Forbes – alto saxophone, flute
John Lowery – tenor saxophone, clarinet
Nathan See – tenor saxophone, clarinet
Kenny Pexton – baritone saxophone, bass clarinet
Sam Hoyt – trumpet, flugelhorn
Bobby Spellman – trumpet, flugelhorn
Dave Smith – trumpet, flugelhorn
Joey Kendrick – trumpet, flugelhorn
Nick Grinder – trombone
Sam Blakeslee – trombone
Greg DeAngelis – trombone
Julie Dombroski-Jones – bass trombone
Andrew Boudreau – piano
Jacob Aviner – guitar, fx
Eduardo Belo – bass
Jongkuk Kim – drums
Catey Esler – vocals (3)
Jorge Esquinca – spoken word
Ines Velasco – all compositions
- グアダラハラ (Guadalajara) …メキシコ・ハリスコ州の州都。大都市でありながらスペインの植民地だった面影を残す古都。その美しさから「西部の真珠」と呼ばれる。メキシコの代表的な音楽であるマリアッチの発祥の地ともいわれている。 ↩︎