ギンガ直系ギター&トロンボーンの素敵すぎる夫婦デュオ、Natalie Cressman & Ian Faquini 新作

Natalie Cressman & Ian Faquini - Revolução

ナタリー・クレスマン&イアン・ファキーニ『Revolução』

サンフランシスコを拠点に活動する夫婦デュオ、ナタリー・クレスマン&イアン・ファキーニ(Natalie Cressman & Ian Faquini)の新作アルバム『Revolução』が届いた。“革命”や“革新”を意味するタイトルの4枚目のデュオ作だが、その音楽自体はいつも通り穏やかで、分断と混乱の進む社会への静かな抵抗の表れのようだ。

今作は二人によるデュオ・ライヴのシンプルさをスタジオ録音で再現することを目指しており、愛、喪失、日常の習慣といった普遍的なテーマを探求した音楽的ビネットの集合体となっている。イアン・ファキーニのギターとナタリー・クレスマンのトロンボーン(テナー/バス)、そして二人のヴォーカルが全てで、それ以外は何もない。シンプルに削ぎ落とされた音のように感じられるかもしれないが、逆にこれで“全て”だと言えるような濃密な音の世界が展開される。

多くは主にイアン・ファキーニ作曲によるオリジナルだが、早世のサンバのレジェンドであるノエル・ホーザ(Noel Rosa, 1910 – 1937)の(1)「Cem Mil Réis」や、北東部音楽の巨匠ドミンギーニョス(Dominguinhos, 1941 – 2013)の(3)「Tenho Sede」といったブラジル音楽への深い敬愛に満ちたカヴァーも。一方でイアン・ファキーニ作曲の(2)「Contradança」や(4)「Capenga Mas Não Cai」などなど、彼の師であり最も音楽的な影響を受けたギンガ(Guinga, 1950 – )からの影響が非常に色濃く、ギンガ本人の作曲といわれれば信じてしまうほどその芸術性も極まってきている。

(10)「Revolução」

(7)「Blues For James」は、2023年8月に癌により40歳の若さで亡くなった、二人の友人のサックス奏者ジェームズ・ケイシー(James Casey, 1983 – 2023)へと捧げられた曲。そして(11)「Vigil」はナタリーの祖父の死を巡る苦悩を描いているなど、喪失の悲しみと、その受容という普遍的なテーマを正面から捉えた楽曲も美しい。

(7)「Blues For James」

Natalie Cressman & Ian Faquini 略歴

ナタリー・クレスマンはカリフォルニア州サンフランシスコ生まれのトロンボーン奏者/歌手。
母親は歌手のサンディ・クレスマン(Sandy Cressman)、父親はラテンロックバンド、サンタナ(Santana)のトロンボーン奏者ジェフ・クレスマン(Jeff Cressman)という音楽一家に生まれ育った。
エリス・レジーナ、ジョニ・ミッチェル、ポール・サイモン、ハービー・ハンコック、ウェザー・レポートなど、幅広いジャンルから影響を受けたと公言している。

イアン・ファキーニはブラジルの首都ブラジリア生まれ、8歳の時に米国カリフォルニアに移住したギタリスト/SSW。過去にブラジルを代表する鬼才作曲家/ギタリストのギンガ(Guinga)にも師事している。
2016年には歌手パウラ・サントーロ(Paula Santoro)とのアルバム『Metal Na Madeira』を発表。丁寧に紡がれたアコースティック・サウンドはブラジル音楽ファンの間で高く評価された。

ナタリー・クレスマンとイアン・ファキーニは最初のデュオ・アルバム『Setting Rays of Summer』(2019年)をリリース後、人生のパートナーとなり、さらに多くのデュオを中心としたアルバムをリリース。その親密な穏やかさと、音楽的な奥の深さを伴った音楽性が高く評価されている。

Ian Faquini – guitar, vocal
Natalie Cressman – trombone, vocal

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