Michael Valeanu 『Road Songs』
フランス出身、米国NYを拠点に活動するジャズギタリスト、ミカエル・ヴァレアヌ(Michael Valeanu)のトリオによる新譜『Road Songs』。“旅”をテーマに、タイムレスな名曲をメインに演奏する親しみやすいアルバムだ。旅路を共にするトリオのメンバーはチリ出身のドラマー、ロドリゴ・レッカバレン(Rodrigo Recabarren)と、米国のベース奏者ジュリアン・スミス(Julian Smith)。
アルバムはカヴァー曲が中心。アコースティック・ギターで演奏されるジャズ・スタンダード(1)「Moon River」、アルバムタイトルにも採用されたウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery, 1923 – 1968)作の(2)「Road Song」、今作の中でも異彩を放つブラジルの音楽家エグベルト・ジスモンチ(Egberto Gismonti)の代表曲(3)「Loro」、ミシェル・ルグラン(Michel Legrand, 1932 – 2019)作曲の著名な映画音楽(4)「Les Moulins De Mon Coeur」(風のささやき)といったヴァリエーションに富んだ選曲で、そうした名曲たちで自由自在に即興で“遊ぶ”ジャズの醍醐味が感じられる。
極めつけはチャーリー・パーカー(Charles Parker, 1920 – 1955)作曲の(5)「Segment」で、パーカーにとって珍しいマイナー調のこの曲のギターによる高速スウィングは、ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt, 1910 – 1953)が創始したマヌーシュ・スウィングの血が確かに感じられる。
圧倒的なギターの技量を誇りながら、カヴァー曲ではアレンジの欠乏により表現者として若干の物足りなさも感じられるが、ラストに収録された唐突なバロック調の(8)「Invention」では、彼のギタリストとしての素養の深さも垣間見える。
Michael Valeanu – guitar
Julian Smith – double bass
Rodrigo Recabarren – drums