メキシコの先住民族出身のSSW、ラウラ・イタンデウイの2nd
2021年のデビュー作『Laura Itandehui』での内省的で伝統を重んじたソングライティングからの明らかなフェーズの転換だ。メキシコシティのシンガーソングライター、ラウラ・イタンデウイ(Laura Itandehui)の2ndアルバム『Si Me Ven Alegre』(2025年)は近隣ラテン圏への旅を経てより明るく、開放的になった。歌詞や曲調には人生の喜びを前面に押しだし、その声にも向うべき未来への確固たる信念や自信を覗かせる。
アルバムのタイトルは「もし私が幸せそうに見えたら」の意味。2022年のペルー、コロンビア、ベネズエラへの旅行と、そこでの現地ミュージシャンとの出会いで得た刺激から生まれたもので、サルサ、グアグアンコ、クンビア、バジェナートといったラテンアメリカの活気あるリズムを基調とし、喜びや愛、人生の複雑さを描く。デビュー作がそれまでに書き溜めた楽曲の偶発的なコレクションだったのに対し、今作は意図的なテーマをもって制作され、ラテンジャズを基軸としたバンドサウンドも明らかに成熟した。
彼女の音楽には不思議な”安らぎ”の感覚がある。アルバムの中には様々なリズムがあるが、それぞれがまるでスタンダードのような親しみやすい旋律でコーティングされている。「伝えたい物語と、それをどのように伝えるかによると思います」多様なジャンルの融合について、彼女は思慮深く答えている。
「ジャンルが異なれば、必要な物語のスタイルも異なります。例えば、ランチェーラとバジェナートで同じラヴストーリーを語ることはできません。私の作曲方法は、たいていフレーズから始まります。短いフレーズ、あるいは単語一つだけでも。それからハーモニー、メロディー、歌詞、すべてが同時に生まれます」
こうして各曲の物語に導かれ選択された曲風は、多様なようでいて一貫した世界観を作り上げている。柔らかなホーン・セクションが印象的なアコースティック・アンサンブル(1)「Mejor Ya No Regreses」は短調の曲だが、明るく前向きに失恋からの解放を歌っている。
クンビア風の軽やかなリズムと彼女の持ち味である温かでフォーキーな歌声が組み合わさった(4)「La Espera」も魔法のような美しさ。曲調はポジティヴだが、歌詞は遠く離れた恋人をいつまでも待つ心情を描いており、日常の中にぽっかりと空いた穴を、空想の中の希望で埋めようとする切なさが感じられる。終盤の2回の転調による高揚のあとの寂しげなエンディングも象徴的だ。
彼女の音楽の魅力は、スタンダードかと思わせるほどのソングライティングの巧みさだろう。瑞々しくも成熟した素晴らしい才能を感じさせてくれる、優れたアルバムだ。
Laura Itandehui プロフィール
ラウラ・イタンデウイ(本名:Laura Itandehui Velasco Pérez)は1993年にメキシコ南部のオアハカ州オアハカ・デ・ファレスで生まれたシンガーソングライター。イタンデウイ(Itandehui)という姓はメキシコ南部の先住民であるサポテコ族(Zapotec)の言語で“空から落ちた花”を意味し、オアハカの先住民文化に深く根ざしている。
現在はメキシコシティに在住。彼女の音楽はフォークを基調とし、ラテンアメリカの伝統リズム(サルサ、クンビア、バジェナート、ダンソンなど)とジャズの要素を融合させた豊かな音楽性が特徴。
Laura Itandehui – vocals, backing vocals, acoustic guitar, electric guitar
Gustavo Guerrero – acoustic guitar, backing vocals, hand percussion
Diego Franco – tenor saxophone, baritone saxophone, clarinet, backing vocals
Santiago Von Sternenfels – alto saxophone, backing vocals
Roberto Verástegui – piano, organ, electric keyboards
Pablo González Sarre – contrabass, electric bass
Reynier Limonta – percussion
Gabriel Puentes – drums
Gustavo Nandayapa – drums
Gabriela y Cecilia Sandoval (The Sandoval Sisters) – backing vocals
Daniel Bitran Arizpe – backing vocals
J.C. Vertti – backing vocals
Israel Rodríguez-Martínez – backing vocals