パウロ・ベリナーチ率いる、ガロート没後70年記念作
ブラジル音楽の発展に多大な影響を与えたギタリスト/マルチ弦楽器奏者であるガロート(Garoto, 本名:Aníbal Augusto Sardinha, 1915 – 1955)の没後70年を記念し、ブラジルを代表する3人のギタリストが集い、そのタイムレスな魅力を発信するプロジェクト『Paulo Bellinati trio toca Garoto』。主にスティール弦の6弦ギターを弾くパウロ・ベリナーチ(Paulo Bellinati)、ナイロン弦の6弦を弾くダニエル・ムハイ(Daniel Murray)、そしてナイロン弦の7弦を弾くスワミ・ジュニオール(Swami Jr)によるトリオが、新たなアレンジを加えてガロートの歴史的な楽曲群に再訪する。
アルバムには(2)「Duas Contas」や(3)「Lamentos Do Morro」、(4)「Gente Humilde」といったガロートの代表曲を収録。センターにパンニングされたパウロ・ベリナーチのカヴァキーニョを思わせる鉄弦、豊かなハーモニーとリズムを中心的に担う左チャンネルのダニエル・ムハイ、ベースやハーモニーを担う右チャンネルのスワミ・ジュニオールという編成はバランスが取れており、繊細なアレンジを大胆に表現する彼らの卓越した技巧とも相まってガロートの音楽をより魅力的に映し出す。
(5)「Nisso, Pelaram A Horta !!!」はこれまで誰も録音していない、ガロートの未発表曲だ。これはパウロ・ベリナーチが約20年前にガロートの娘から受け取った楽譜から発見した曲で、ショーロの伝統と、ギター・アンサンブルならではの革新的なアレンジを兼ね備え、今作で初めて世の中に披露されたもの。3人それぞれが明確な役割を担い、見せ場を持つ素晴らしい演奏が展開されており、ガロートの作曲家としての魅力とパウロ・ベリナーチのアレンジの掛け算が予想以上の最高の結果を生み出している。
夭逝の作曲家/ギタリスト、ガロート
ガロート(Garoto, 本名:Aníbal Augusto Sardinha, 1915 – 1955)はポルトガル移民2世としてサンパウロに生まれた。ギタリストとして知られているが、バンドリンやカヴァキーニョなど弦楽器はなんでも得意とし“弦楽器の天才”と称賛されていたという。
15歳頃からプロとして活動。25歳の頃に国民的歌手カルメン・ミランダ(Carmen Miranda)のバックバンドとして米国でのツアーも経験し、ブラジル随一のテクニックを持ったギタリストとして一部では知られるものの、経済的な観点では充分に大成したとは言えない生活が続いていたようだ。
彼の名が広く知られるようになったのは晩年(…といっても30代の後半)で、1953年にリリースされ当時70万枚を売ったという陽気な曲「São Paulo Quatrocentão」がきっかけ。ガロートはここで初めて大金を手にしたが、ヨーロッパツアーを計画中の1955年5月3日に突然の心臓発作で帰らぬ人となってしまった。短い人生ではあったが、卓越した演奏技術やハーモニー感覚などはショーロにおけるギターの地位・役割の向上や後のボサノヴァの誕生にも強い影響を与えている。
ガロートが遺した曲としては、今作にも収録されている代表曲(7)「Lamentos do Morro」や、死後にバーデン・パウエルやシコ・ブアルキらによって取り上げられ広まった(5)「Gente Humilde(素朴な人々)」などが知られている。
Paulo Bellinati – steel string guitar, nylon string guitar
Daniel Murray – nylon string guitar
Swami Jr. – 7-string guitar