ブラジルを代表する音楽家が多数参加!異色の経歴のSSWフェルナンド・グレッコのデビュー作

Fernando Grecco - Vir a Ser

ブラジルのSSWフェルナンド・グレッコ、初のフル・アルバム

リリースから1年経った今になって、初めてこの素晴らしいアルバムに気がついた。フェルナンド・グレッコ(Fernando Grecco)というブラジルのシンガーソングライター/ギタリストの2022年作『Vir a Ser』。2017年にデビューEP『Repente da Palavra』をリリースしており、そちらはディスクユニオンがシンプルな紹介ページを作っていたが、初のフルレンス・アルバムである本作は日本語の紹介記事が見つからなかった。おそらく本記事が、彼の日本語での初のイントロデューシングとなるだろう。

アルバムにはヒカルド・ヘルス、アントニオ・ロウレイロ、ジョアナ・ケイロス、フレデリコ・エリオドロといった日本でも著名なアーティストが多数参加。パンデミックによる中断がありながらも、2019年から丁寧に制作が開始された充実作で非常に聴き応えがある。

アルバムの内容詳細の前に、まずはフェルナンド・グレッコのバイオグラフィから紹介しよう。

現代ブラジル音楽の最重要レーベル「Borandá」の創立者であり、アーティスト

フェルナンド・グレッコはサンパウロ生まれ。15歳からギターを始め、学園祭で演奏するなどしていたが、その後は電気工学部に入学しIT分野の幹部としてキャリアを積む一方で、音楽は趣味程度にとどめていた。マーケティング分野を学んだ彼は2009年に音楽レーベル、ボランダ(Borandá)を創立し、人気アーティストであるアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)、タチアナ・パーハ(Tatiana Parra)、ナ・オゼッチ(Ná Ozzetti)、ダニ・グルジェル(Dani Gurgel)、トニーニョ・フェハグッチ(Toninho Ferragutti)などの作品を手がけた。2011年からはECMレーベルのブラジルでの独占販売代理店の契約を勝ち取ったが、これはブラジルを代表する音楽家であるエグベルト・ジスモンチ(Egberto Gismonti)の作品を取り扱いたいというフェルナンドの情熱が実現させたようだ。

Borandáレーベルの経営で成功をおさめていく中で、フェルナンドの中にあった“音楽をつくり、演奏したい”という想いも再燃した。彼は2011年にエドゥ・ロボ(Edu Lobo)の楽曲をインド音楽やロックの要素を交え再解釈したバンド、ザンジバル(Zanzibar)を結成。2017年には自身のソロ名義で前述のデビューEP『Repente da Palavra』をリリースした。

彼のレーベルを通ってきた総勢26名もの音楽家が参加したデビュー・アルバム

そんな才人の初のフルレンス・アルバムである『Vir a Ser』。サンバやボサノヴァといったブラジル独自の音楽を軸に、ロックやラップ、ジャズの要素も取り入れた現代的な作風で、時間をかけ丁寧に制作されたことが一聴してわかる素晴らしい仕上がりとなっている。

演奏陣はフェルナンド・グレッコがヴォーカル、ギター(ナイロン弦アコースティックとエレクトリック)、プログラミングなどを自ら行うほか、ドラムスのアントニオ・ロウレイロ(Antônio Loureiro)、クラリネットのジョアナ・ケイロス(Joana Queiroz)、ヴォーカルのタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)、ヴァイオリンのヒカルド・ヘルス(Ricardo Herz)、ベースのフレデリコ・エリオドロ(Frederico Heliodoro)にイゴール・ピメンタ(Igor Pimenta)などなどブラジルを代表するプレイヤーの名前も連なる。

ゲストシンガーにタチアナ・パーハを迎えた(12)「Tempo」

ここまで書くと、一定の権力を持ったレーベル・オーナーがその人脈をフルに使って贅沢な夢を叶えた、というように捉えられるかもしれない。が、このアルバムを実際に聴いてみればそのような代物ではなく、表現すべき思いを持つ音楽家がその魂を込めて制作した真摯な音楽だと理解できるだろう。事実、私自身もまず彼のサウンドに惹かれ、彼の経歴を調べるうちに異色の人物だと気づいたのだ。

フェルナンド・グレッコの音楽的な影響源はジョン・コルトレーン、マハヴィシュヌ・オーケストラ、マイルス・デイヴィス、リターン・トゥ・フォーエヴァーといったジャズ/フュージョンや、アントニオ・カルロス・ジョビンやエドゥ・ロボなどのブラジル音楽と公言しているが、それ以外にもロックやヒップホップなど幅広く音楽に造詣が深いことはこのアルバムを聴けば明らかだ。

本作からの最初のシングルでもある(9)「Canto」
(13)「Inevitável Fim」、意味は“避けられない結末”

ブラジルの重要レーベルのオーナーであり、優れた感性をもつアーティスト、フェルナンド・グレッコ。彼がこれからも届けてくれるであろう多様な音楽は、しばらく私たちの耳を大いに楽しませてくれそうだ。

Fernando Grecco – vocal, acoustic guitar, electric guitar, programming
Frederico Heliodoro – bass (1, 5)
Louise Wooley – Rhodes (1, 8)
Sérgio Reze – drums (1, 3, 5)
Felipe Roseno – percussion (1, 2, 7)
Joana Queiroz – clarone, clarinet (2)
Ana Karina Sebastião – bass (2, 7)
Alê Siqueira – programming, vocal effects (2, 11)
Swami Jr. – bass, acoustic guitar (3)
Renato Martins – percussion (3)
Gabi Guedes – percussion (3)
André Lima – programming (3, 12)
Vanessa Ferreira – acoustic bass (4, 11)
Cleber Almeida – drums (4, 11)
Chrys Galante – percussion (4, 6, 12)
Fábio Sá – bass (6, 8)
Antônio Loureiro – drums (6, 8)
Fábio Leandro – Rhodes (9)
Gabriel Catanzaro – bass (9)
Alysson Bruno – percussion (9)
Filipe Gomes – drums (9)
Will Bone – saxophone, trumpet (9)
Ricardo Herz – violin, rabeca (10)
Marcelo Lemos – guitar (10, 13)
Igor Pimenta – bass (10, 13)
Pedro Henning – drums (10, 13)
Tatiana Parra – vocal (12)

Fernando Grecco - Vir a Ser
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