この一週間も、世界のあちこちから届いた新譜が豊かでした。ブラジルの至宝ジョイス・モレーノの新作、ドヴォルザークに呼びかけるジェームス・ブランドン・ルイス、ザンビアのロックの記憶をヒップホップに結び直すSampa The Great、ポルトガルのベースとアコーディオンの対話まで。ムジカテーハのPLAYGROUND作品『My Ten』のポスターにまとめましたので、まずはジャケットを眺めながら、各盤を少しずつ聴いてみてください。
→ 2026年10月23日〜30日 新着おすすめ │ My Ten
- 1 はじめに
- 2 10枚の紹介
- 2.1 ジョイス・モレーノ『Never Too Soon』
- 2.2 クリスチャン・マクブライド&ウルサ・メジャー『Points of Light』
- 2.3 オルガ・アメルチェンコ『Touching the Invisible』
- 2.4 サンパ・ザ・グレート『Nu Zamrock』
- 2.5 サプライズ・シェフ『Frogs In A Pond』
- 2.6 ジェームス・ブランドン・ルイス & レッド・リリー『Calling Antonín』
- 2.7 アンナ・ウェバー『it’s easier to imagine the end of the world…』
- 2.8 ジム・スナイデロ『House of Trane』
- 2.9 ミハイル・ウォルニー『eine winterreise』
- 2.10 カルロス・ビカ&ジョアン・バハーダス『The Great Silence』
- 3 おわりに
はじめに
一週間で世界から届く新譜は膨大ですが、その中から「これは紹介したい」と思えた盤を10枚選び、『My Ten』でポスターにしました。並び順はポスターの体裁のためのもので、優劣ではありません。ブラジル、アメリカ、ドイツ、ポルトガル、オーストラリア、ザンビア。地図を広げるように、1枚ずつ辿っていきます。
10枚の紹介
ジョイス・モレーノ『Never Too Soon』
ブラジル音楽とともに長い道のりを歩んできた歌い手、ジョイス・モレーノ(Joyce Moreno)の新作です。ギタリストのトニーニョ・オルタ(Toninho Horta)が参加し、プロデュースは夫でありドラマーのトゥッチ・モレーノ(Tutty Moreno)。ギターを抱えて椅子に座るジャケットの姿そのままに、円熟した歌とギターが聞こえてくる一枚です。(10月30日発売/Far Out Recordings)
クリスチャン・マクブライド&ウルサ・メジャー『Points of Light』
現代ジャズを代表するベーシスト、クリスチャン・マクブライド(Christian McBride)が、次世代の奏者たちと作り上げたバンド、ウルサ・メジャー(Ursa Major)のデビュー作。星空へ光が収束していくジャケットのように、若い才能が一つの星座を形作り始めています。(10月30日発売)
オルガ・アメルチェンコ『Touching the Invisible』
ベルリンを拠点に活動するアルトサックス奏者、オルガ・アメルチェンコ(Olga Amelchenko)の、Edition Recordsからの新作。これまでの作風から一歩進んで、グルーヴを前面に押し出したサウンドに挑んでいます。「触れることのできないものに触れる」という題名も印象的です。(10月23日発売/Edition Records)
サンパ・ザ・グレート『Nu Zamrock』
ザンビア出身のラッパーであり詩人、サンパ・ザ・グレート(Sampa The Great)の新作。1970年代にザンビアで花開いたロック「ザムロック」の記憶を、ヒップホップの現在と結び直した一枚です。バンドを従えたジャケットの佇まいが、その宣言の強さを物語っています。(10月30日発売)
サプライズ・シェフ『Frogs In A Pond』
オーストラリア、メルボルンのインストゥルメンタル・グループ、サプライズ・シェフ(Surprise Chef)のスタジオ作第5作にして、Concord Jazzへの移籍第1作。イタリアのジャッロ映画や60〜70年代ヨーロッパの映画音楽に触発され、「存在しない映画のためのサウンドトラック」として作られた、約40分の組曲です。(10月23日発売/Concord Jazz)
ジェームス・ブランドン・ルイス & レッド・リリー『Calling Antonín』
テナーサックスのジェームス・ブランドン・ルイス(James Brandon Lewis)が率いるレッド・リリーの第3作は、チェコの作曲家ドヴォルザークへのオマージュ。1892年からアメリカで過ごしたドヴォルザークの歳月に光を当て、コルネット、ヴィオラ、チェロを含む編成で、世紀を越えた対話を試みています。(10月23日発売/TAO Forms)
アンナ・ウェバー『it’s easier to imagine the end of the world…』
カナダ出身でニューヨークを拠点とする作曲家、サックス/フルート奏者、アンナ・ウェバー(Anna Webber)の新作は、ノネット(9人編成)のための作品。緻密に書かれたアンサンブルと即興がせめぎ合う、彼女ならではの緊張感のある世界が広がります。(10月30日発売/Intakt Records)
ジム・スナイデロ『House of Trane』
アルトサックスのジム・スナイデロ(Jim Snidero)が、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の旧居を訪ねた体験に着想を得たカルテット作。ピアノにステファン・カールソン(Stefan Karlsson)、ベースにナット・リーヴス(Nat Reeves)、ドラムにジェイソン・ティーマン(Jason Tiemann)を迎えています。タイトルの「Trane」は、コルトレーンの愛称です。(10月30日発売/Savant Records)
ミハイル・ウォルニー『eine winterreise』
ドイツのピアニスト、ミハイル・ウォルニー(Michael Wollny)が、シューベルト(Franz Schubert)の歌曲集『冬の旅』をソロピアノで読み替えた一枚。原題の「Die Winterreise」ではなく、不定冠詞の「eine」とした題名に、偉大な古典を自分の旅として引き寄せる、親密な読み替えの姿勢が表れています。(10月30日発売/ACT)
カルロス・ビカ&ジョアン・バハーダス『The Great Silence』
ポルトガル・ジャズを代表するベーシスト、カルロス・ビカ(Carlos Bica)と、ヨーロッパ有数のアコーディオン奏者、ジョアン・バハーダス(João Barradas)によるデュオ作。フォークの歌心とジャズの対話が、海辺の小さな家を描いたジャケットのように、静かで広い風景を聴かせます。(10月23日発売)
おわりに
気になるジャケットがありましたら、上のポスターでそのまま試聴できます。そして、あなたの好きな10枚も、『My Ten』でポスターにしてみてください。来週はどんな音楽と出会えるでしょうか。