- 2024-09-13
- 2024-09-13
新時代のジャズ・ヴィブラフォンが響く。鬼才パトリシア・ブレナン、奇天烈な世界を拡張する新作
ヴィブラフォンによる音楽を次のレベルへと導く鬼才パトリシア・ブレナン(Patricia Brennan)の新作『Breaking Stretch』は、やはり期待以上だった。今作は3管を含むセプテット編成で、カオスぎりぎりを攻める最高にシビれる音楽をぶちかます。
ヴィブラフォンによる音楽を次のレベルへと導く鬼才パトリシア・ブレナン(Patricia Brennan)の新作『Breaking Stretch』は、やはり期待以上だった。今作は3管を含むセプテット編成で、カオスぎりぎりを攻める最高にシビれる音楽をぶちかます。
幼なじみのホセ・トマス・プーガ(José Tomás Puga)とビセンテ・ラルーレ(Vicente Larroulet)によって結成された南米チリのフォークデュオ、ホセ・ビセンテス(José Vicentes)による2枚目のアルバム『Lugar donde se florece』は、オーガニックなサウンドに、子どもたちの声なども平和で心安らぐ素敵な作品だ。
ブラジルのシンガーソングライター、シコ・シコ(Chico Chico)がロックやMPB、そしてブラジル北東部音楽などにインスパイアされた新作『Estopim』をリリースした。ソロ名義では2021年の『Pomares』以来となる第二作目で、都会的な洗練と、田舎風の素朴さを併せ持った彼らしい素直な音楽が楽しめる作品に仕上がっている。
アルバム『Inner Spirits』は、スウェーデンのピアニスト/作曲家のヤン・ラングレン(Jan Lundgren)と、ブラジルの7弦ギター奏者ヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)の共作だ。互いにオリジナル曲を持ち寄り、一部にはカヴァー曲を取り上げた今作は、北欧ジャズとブラジル音楽という全くベクトルの異なる音楽性が意外なほどに調和し、言葉にできないほど素敵な空間を作り上げている。
『Mestizx』は、公私共にパートナーであるボリビア出身の女性シンガーソングライター/マルチ奏者イベリッセ・グアルディア・フェラグッティ(Ibelisse Guardia Ferragutti)と、プエルトリコにルーツを持つシカゴ出身の男性ジャズドラマー/パーカッショニスト、フランク・ロザリー(Frank Rosaly)の共同名義によるデビューアルバムだ。アルバムタイトルは中南米におけるスペイン植民地時代に性別を問わず“混血の人”を意味する言葉として使われたもので、ブラジル、ボリビア、プエルトリコという二人の多様なルーツから来る多様性と、脱植民地という重要なテーマをアーティスティックに扱っている。
チュニジア出身、現在は米国ニューヨークで活動するベーシスト/作曲家マルワン・アッラム(Marwan Allam)がデビューアルバム『باب بحر』(英字転写:Bab Bhar)をリリースした。アルバムのタイトルは彼の祖国であるチュニジアの首都チュニスのヨーロッパ式の新市街とイスラム統治時代に栄えた旧市街(メディナ)を分つ歴史的な門「バブ・エル・バール(海の門)」、別名「ポルト・ド・フランス(フランスの門)」に因んで名付けられている。
米国のシンガーソングライター、イングリッド・マイケルソン(Ingrid Michaelson)の2024年新譜『For the Dreamers』。オリジナルだけでなく、「夢はひそかに」の邦題で知られるディズニーの名曲(4)「A Dream Is a Wish Your Heart Makes」、(6)「What a Wonderful World」(この素晴らしき世界)といったカヴァーも丁寧に仕上げられており、ドラムレスの曲が多い構成でリラックスして聴ける作品となっている。
米国のマルチ奏者/作曲家モーガン・ゲリン(Morgan Guerin)がほぼすべての楽器を演奏し作り上げた新作『Tales of the Facade』は、エレクトリック・ジャズ、R&B、ソウル、ヒップホップといった多様な音楽性を内包する新世代のマルチ奏者の才能が詰め込まれたアーティスティックな作品だ。
アルメニア出身のピアニスト/作曲家のティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)が、構想から5年の歳月をかけて新たなアルバム『The Bird Of A Thousand Voices』を完成させた。今作はアルメニアの古い物語である『Hazaran Blbul』をテーマに、音楽に留まらないトランスメディア・プロジェクトとして発表されており、ティグラン・ハマシアンという天才的アーティストのキャリアを代表するであろう壮大な作品となっている。
スペインのピアニスト/作曲家ダニエル・ガルシア(Daniel García)率いるピアノトリオの新作『Wonderland』が素晴らしい。現代的なジャズ、スペインの伝統音楽、クラシック、ラテン音楽などの折衷的なスタイルである彼の音楽はリズム、ハーモニー、メロディの多様性も特長的で、楽曲ごとに異なる色彩を示す。驚くようなゲストの参加もあり、グローバルなジャズの傑作と言っても過言ではない作品だ。
イタリアのベーシスト/作曲家アレックス・カッレーリ(Alex Carreri)の新譜『a time and a place』は、終始高めのテンションで疾走する感覚が最高に堪らないジャズ/フュージョン作品だ。大半はインストだが、(2)「São Paulo to Bangalore」に現代最高峰のインド系ヴォーカリスト、ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)が参加したり、3曲でトランペットの巨匠ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)が参加したりと聴きどころも満載。わかりやすいカッコよさで、万人におすすめできるアルバムと言えるだろう。
チリの歌手フランチェスカ・アンカローラ(Francesca Ancarola)の新作『Canciones de Hugo Moraga』は、チリのヌエバ・カンシオン(Nueva canción)を代表するSSWであるウーゴ・モラガ(Hugo Moraga, 1952 - )のカヴァー集だ。演奏にはチリのギタリスト、シモン・シュリーバー(Simón Schriever)に打楽器奏者ルイス・バルエト(Luis Barrueto)、アルゼンチンの鍵盤奏者カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)、ブラジルのフルート奏者アリーネ・ゴンサウヴェス(Aline Gonçalves)ら南米の優れた音楽家が参加。
カナダのシンガーソングライター、ルカ・クプロフスキー(Luka Kuplowsky)による、江戸時代後期の禅僧/詩人・良寛(Ryōkan Taigu, 1758 - 1831)をはじめとした世界各地の詩人たちにインスパイアされた新作『How Can I Possibly Sleep When There is Music』。ザ・リョウカン・バンド(The Ryōkan Band)と名付けられたバンドによる静謐で哲学を感じさせるバンドサウンドと、ルカ・クプロフスキーと女性歌手フェリシティ・ウィリアムス(Felicity Williams)による男女ヴォーカルが詩的な世界へと連れていってくれる素晴らしい作品だ。
スウェーデンのベース/チェロ奏者/作曲家のスヴァンテ・セーデルクヴィスト(Svante Söderqvist)の2023年作『The Rocket』は、どこまでも美しく深みのある楽曲と演奏が続く北欧ジャズの絶品だ。ピアノトリオ編成をメインに、曲によってはアコーディオンやクラリネットも参加し、抒情的で豊かな音楽を紡いでいく。