- 2026-05-06
- 2026-04-24
詩情豊かな歌とピアノが心に沁みる。マルタ・ゴメス&アントニオ・マゼイによる南米の歌
コロンビア出身の歌手/ギター奏者マルタ・ゴメス(Marta Gómez)と、ベネズエラ出身のピアノ奏者アントニオ・マゼイ(Antonio Mazzei)による『Arauca』。アルバムのタイトルは二人の出身国の間に流れるアラウカ川から取られており、南米の伝統曲(フォルクローレ)にジャズの洗練が加わった素敵な作品だ。
コロンビア出身の歌手/ギター奏者マルタ・ゴメス(Marta Gómez)と、ベネズエラ出身のピアノ奏者アントニオ・マゼイ(Antonio Mazzei)による『Arauca』。アルバムのタイトルは二人の出身国の間に流れるアラウカ川から取られており、南米の伝統曲(フォルクローレ)にジャズの洗練が加わった素敵な作品だ。
強烈な印象を残すジャケット写真は、ペルー南部クスコ地方の町パウカルタンボで毎年7月中旬に行われるビルヘン・デル・カルメンの祭り(Fiesta de la Virgen del Carmen)の様子だ。カトリックの聖母崇敬とアンデス先住民の信仰が混交したこの祝祭では、鮮やかな衣装や仮面を纏った人々が舞い踊りながら祈り、音楽や行列、花火がまるで“生きた劇場”のように町全体を埋め尽くすという。
イスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)と、フランス出身のクリストフ・パンザニ(Christophe Panzani)のデュオによる『Warp & Weft』は、おそらく2026年屈指のジャズの名作だ。まるでそのテイクの少なさや、スタジオをレンタルした時間の短さで競うかのように、短期間のセッションでテーマと即興演奏を主体に録音されることの多いジャズという分野の、しかもデュオとしては間違いなく異例の、2年間という制作期間を経て誕生したアルバムは、タイトル「経糸と緯糸」という言葉が喚起するイメージの期待を裏切らない、素晴らしい芸術だ。
フランス出身のジャズ・ヴィブラフォン奏者、サイモン・ムーリエ(Simon Moullier)が早くも6作目となるアルバム『Ceiba』をリリースした。熱帯アメリカやアフリカに自生し、さまざまな文化で神聖視される巨木セイバをインスピレーションの源とし、ポスト・バップから現代のジャズ、そして未来のジャズまでをも見据えたエキサイティングな傑作だ。
ジャズやファンクにグナワ音楽を持ち込み、その強烈なグルーヴで四半世紀以上にわたり人々を踊らせてきた米国のジャムバンド、クラブ・デリフ(Club d'Elf)。バンドにグナワの遺伝子を注いだ活動初期からの最重要メンバーであるモロッコ出身のブラヒム・フリーブガーン(Brahim Fribgane)は2024年初頭に亡くなったが、彼への追悼とともに“トランス体験”を是とするコレクティヴの根幹的な魂が健在であることを証明したのが、2026年4月にリリースされた最新作『Loon & Thrush』だ。
サックス、シンセ、ドラムスというユニークな編成のオルタナティヴ・ジャズトリオ、ラスト・シーン・アライヴ(Last Scene Alive)のデビューアルバム『World Class Pep Talk』が面白い。バンドは米国ワシントンD.C. とオランダ・アムステルダムを拠点とするミュージシャンによって構成されており、即興演奏を主体にジャズやパンクロック、フュージョンなどジャンルを超越した刺激的な音楽を激しく展開する。
「静謐」と「強烈」、この一見相反するとも思える言葉が最も当てはまるというのが、スウェーデン出身のピアニスト、ヨエル・リュサリデス(Joel Lyssarides)への世間の評価らしい。私は彼の過去作について“まるで冬の冷たく引き締まった空気のように端正な音。クラシック音楽からの影響の強いジャズで、思慮深く紡いでいく絶妙なハーモニーは深呼吸したくなるほどの澄んだ美しさ”と評したが、なるほど、静謐なだけでなく「強烈」という言葉も言い得て妙だな、と2026年最新作『Late on Earth』を聴いて思った。
ブラジルの歌手ジュリア・シモンイス(Júlia Simões)と、7弦ギター奏者アレサンドロ・ペネッシ(Alessandro Penezzi)による親密なデュオ作『Serenata à Brasileira』。“ブラジルのセレナーデ”というタイトルは完璧だ。ピシンギーニャやカルトーラなど、ブラジル音楽の黄金期を彩った名曲たちは今もなお色褪せない。
ブラジルを代表するベーシスト、チアゴ・エスピリト・サント(Thiago Espírito Santo)の2026年新譜『Ybirá』が最高に素晴らしい。特にブラジル北東部の伝統音楽の流れを汲む超絶的なブラジリアン・インストで、豊かな音楽的土壌に深く根差した雄大な樹を象徴的に描いたジャケット・アートのとおり、とてつもない楽曲と演奏に度肝を抜かれる作品だ。
今回紹介する作品は、パレスチナの古都イェリコ出身で、現在はベルギーを拠点とするクラリネット/ネイ奏者/作曲家アハメド・ハワーシュ(Ahmed Hawwash)のデビュー作『Eternal Homeland』(2025年)。祖国パレスチナへの望郷滲むタイトルが冠せられた本作は、同地の伝統的な旋律にインスパイアされつつ、ジャズの語法も交えた美しくも儚い音楽が繰り広げられる。
ラモマリ(Lamomali)は、フランスを代表するシンガーソングライター、「-M-」ことマチュー・シェディッドが、マリの巨匠コラ奏者であるトゥマニ・ジャバテとその息子バラ・ジャバテ、そして歌手のファトゥマタ・ジャワラと共に結成したユニットで、彼の西アフリカ、とりわけマリ共和国の音楽文化への愛情の結晶だ。2025年末にリリースされた2枚組アルバム『Lamomali Je t'aime』はその集大成で、西アフリカの伝統的な音楽と西洋音楽が高度に融合した音楽性、そして何よりも文化を超えた人々の繋がりを感じさせる素晴らしい作品だ。
2003年にスペイン・マドリードで結成されたデュオ・グループ、カンテカ・デ・マカオ(Canteca de Macao)が、結成10周年を記念して2013〜2014年にかけて展開した革新的なトランスメディアプロジェクト「#UNADECADA」。毎月15日にYouTubeで新曲とMV(ミュージック・ヴィデオ)を公開するというこのプロジェクトは、直前に行われたスペイン音楽史上最大規模の600人が参加したクラウドファンディングのプロジェクトとともに、音楽がフィジカルからインターネット配信での消費に移行する過渡期であった当時、大いに注目された。
BLM運動と密接に関わってきたNYブルックリンのジャズ・コレクティヴ、イレヴェーシブル・エンタングルメンツ(Irreversible Entanglements)が、5作目となる『Future Present Past』をリリースした。これまでの彼らの作品、特に初期の激しい怒りと痛みの表現と比べ、本作は「喜び(joy)」に焦点を当てており、フロント・ウーマンであるムーア・マザー(Moor Mother)の詩も従来のような正義心から沸く怒りよりも、高揚する喜びや励ましといったポジティヴな感情へと変化している。
ともにブラジル出身で、ニューヨークを拠点に活動する歌手ジャミーレ(Jamile)と、ギタリストのヴィニシウス・ゴメス(Vinícius Gomes)によるデュオ・アルバム『Boundless Species』。多くの曲でジョー・マーティン(Joe Martin)のダブルベースもフィーチュアし、ブラジル音楽とジャズの境界を溶かす、新たなブラジリアン・ジャズを模索する。