TAG

ヨーロッパジャズ

  • 2025-08-09
  • 2025-08-09

欧州ピアノトリオのトップランナー、Tingvall Trio。ラテン語で『平和』と冠した感動的な新作

ティングヴァル・トリオ(Tingvall Trio)の記念すべき10枚目のアルバムである『Pax』(2025年)は、アコースティック・ピアノトリオの真骨頂を見せるというファンの期待に見事に応えたものとなっている。これまで同様に、スウェーデン出身の天才的なピアニスト/作曲家マーティン・ティングヴァル(Martin Tingvall)が全曲を作曲し、結成以来ずっと変わらないリズムセクションの二人──キューバ出身のベース奏者オマール・ロドリゲス・カルボ(Omar Rodriguez Calvo)とドイツ出身のドラマー、ユルゲン・シュピーゲル(Jürgen Spiegel)──とともに、過去から絶え間なく連なるジャズの現在と、未来へのひとつの方向を示す。

  • 2025-08-02
  • 2025-08-03

現代ジャズ・ハーモニカの旗手ヨタム・ベン=オール、“諸行無常”をテーマにした美しい新作

現在のジャズ・ハーモニカの第一人者、イスラエル出身のヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)の新譜『Impermanence』がリリースされた。長年のコラボレーターであるベネズエラ出身のピアニストのガブリエル・チャカルヒ(Gabriel Chakarji)らを擁するカルテットを中心とし、南米や中東の伝統的な素朴で印象に残るメロディーから、キューバやベネズエラの音楽に触れたことで形成された複雑なリズムまで、音楽家としての彼の繊細で豊かな感情に触れることのできる一枚だ。

  • 2025-07-18
  • 2025-07-18

コラ、チェロ、ソプラノサックス、アコーディオンによる異文化の美しい調和。『Sou Kora』

前作『Les Égarés』が深い感動を呼んだカルテットによる新作『Sou Kora』がリリースされた。コラ、チェロ、サックス、アコーディオンというユニークな四重奏をさらに深める試みで、アフリカやヨーロッパの伝統音楽、室内楽、ジャズといった要素を融合した美しい響きを堪能できる作品だ。

  • 2025-07-06
  • 2025-07-06

急速に変化する現代社会を問う、鬼才ギター奏者ピエール・ペルショーの新譜『不滅の花』

フランスの現代ジャズシーンで活躍するギタリスト/作曲家、ピエール・ペルショー(Pierre Perchaud)が7年ぶりのリーダー作となる『Fleur d'immortelle』をリリースした。ダンサブルなリズムに、エレクトリック・ギターやシンセをフィーチュアした(1)「Go on」から、随所に前衛的な表現を交えたサウンドが刺激的な好盤となっている。

  • 2025-05-16
  • 2025-05-16

エストニア出身、ラージアンサンブルの新星ラーヘル・タルツ。その成熟を示す絶品新譜

エストニア出身のピアニスト/作編曲家ラーヘル・タルツ(Rahel Talts)は、クラシックとジャズ、そして北欧の民族音楽に根差した音楽家として注目すべき新星だ。彼女は2025年リリースの新作『New and Familiar』で、エストニア、デンマーク、リトアニア、ポーランドの出身者から成る14人編成のアンサンブルを率い、知性と感性の見事な調和を示す彼女自身の才能と、それを極めて美しく具現化するバンドメンバーたちとの強い絆を証明してみせている。

  • 2025-05-13
  • 2025-05-11

エモーショナルな人生のサウンドトラック。ニルス・クーゲルマン 2nd『Life Score』

ドイツのベーシスト/作曲家ニルス・クーゲルマン(Nils Kugelmann)が、“人生のサウンドトラック”をテーマに据えた第2作目『Life Score』をACTレーベルよりリリースした。高く評価された前作『Stormy Beauty』と同様、ピアノにルカ・ザンビート(Luca Zambito)、ドラムスにセバスチャン・ヴォルフグルーバー(Sebastian Wolfgruber)とのトリオで、より緻密で力強く物語性のある現代ジャズを聴かせてくれる秀逸な作品に仕上がっている。

  • 2025-05-11
  • 2025-05-11

抒情的な欧州ジャズからアルメニア音楽まで、美しく独創的な音を奏でるオランダの木管奏者新譜

オランダの新鋭サックス奏者/作曲家、ルーク・ファン・デン・ベルフ(Loek Van Den Berg)の新譜『Seafarer』が素晴らしい。楽曲は全てオリジナルで、サックス、トロンボーン、ピアノ、ベース、ドラムスのクインテット編成によって抒情的で美しいテーマ、高度なインタープレイ、幅広い音楽性をバランスよく兼ね備えた音楽体験を約束する。

  • 2025-05-06
  • 2025-05-06

北欧ジャズの生き字引、テリエ・ゲヴェルト 珠玉の未発表音源集『Then and Now』

1960年にノルウェーのオスロで生まれ、小さな港町ラルヴィクで育ったベーシスト/作曲家テリエ・ゲヴェルト(Terje Gewelt) 。10歳のときにギターを手にし弦の振動に心を奪われ、14歳でエレクトリックベースに魅了され、17歳でアコースティックベースと運命的な出会いを果たした彼はその後渡米し名門バークリー音楽大学でジャズを学び、ジャコ・パストリアスやデイヴ・ホランドに個人指導を受け、その技と感性を磨いてきた。

  • 2025-05-03
  • 2025-05-03

国境を越える“音楽の密売人”、フランスの鬼才ダヴィド・オーベイル『Trafiquants』

国境を越えあらゆる音楽を吸収するフランスの鬼才ピアニスト/フルート奏者/作曲家ダヴィド・オーべイル(David Aubaile)。彼がカナダ出身のベース奏者クリス・ジェニングス(Chris Jennings)と、アルジェリア出身のドラムス奏者カリム・ジアド(Karim Ziad)と組んだ2024年作『Trafiquants』が最高に面白い。

  • 2025-05-02
  • 2025-05-02

魔法の町マコンドにインスパイアされた多国籍トリオ、Macondo Trio が描く魅惑の音楽『Morayò』

ベナン、ベルギー、イタリアとそれぞれ異なるルーツを持つ3人によるマコンド・トリオ(Macondo Trio)。ガブリエル・ガルシア=マルケスが『百年の孤独』で描いた魔法のような町の名前に因むトリオは、ヨルバ語で「喜びを見つけた」という意味を冠する新作『Morayò』で、ジャズやアフリカのリズム、アラブ文化が共生する奥行きのある音楽観を提示している。

  • 2025-04-30
  • 2025-04-30

マグレブ音楽と欧州文化を繋ぐアレフ・クインテット、異文化の“対話”から生まれる新しいジャズ

ベルギー・ブリュッセルを拠点に活動する多国籍ジャズバンド、アレフ・クインテット(Aleph Quintet)の第2作目『Hiwar』。アルバム名はアラビア語で「対話」を意味し、ジャズと北アフリカ音楽の“対話”を通じて異なる文化的視点や音楽的感性を結びつけようとする彼らの姿勢を強く反映した作品となっている。

  • 2025-04-27
  • 2025-04-27

壮大な自然にインスパイアされた、心が洗われるシネマティック室内ジャズ。Vega Trails 新譜

Portico Quartetのベース奏者/作曲家ミロ・フィッツパトリック(Milo Fitzpatrick)率いるヴェガ・トレイルズ(Vega Trails)が、絶賛された前作『Tremors in the Static』から3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『Sierra Tracks』をリリースした。木管奏者ジョーダン・スマート(Jordan Smart)とのデュオ編成だった前作から楽器のパレットを大きく拡げ、ピアノやドラムス、室内楽オーケストラを加えた編成で幻想的で美しい音楽を繰り広げる傑作となっている。

  • 2025-04-23
  • 2025-04-23

複雑で豊かな人生の起伏を抒情的に描写する、ギター奏者トメル・コーエンの2nd『Story of a Traveler』

イスラエル出身のギタリスト/作曲家、トメル・コーエン(Tomer Cohen)の2ndアルバム『Story of a Traveler』がリリースされた。深く哲学的・抒情的な感性でニューヨーク・ジャズ界で賞賛された前作から2年、今作ではメンバーを一新しピアノにイスラエル・ジャズの第一人者であるシャイ・マエストロ、そしてベースとドラムスにはベルギー出身の2人を迎え、ジャズ、中東音楽、フォーク・ミュージックなどの影響を感じさせる素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

  • 2025-04-13
  • 2025-04-13

創造性がつくる即興のキャンバス。ヤロン・ヘルマンが描く美しい音の冒険

イスラエル出身、フランスで活躍するピアニスト/作曲家のヤロン・ヘルマン(Yaron Herman) が、新譜『Radio Paradice』をリリースした。アスリートから転向し16歳からピアノと音楽を始め、ジャズの世界で唯一無二の活躍を続け、“創造力とは生まれ持った才能ではなく、学ぶことで誰もが得られるスキルである”という持論を広く世界に発信し多くの共感を得る彼の音楽には、今作でもポジティヴな未来志向の感覚が満ちている。