- 2024-05-20
- 2024-05-20
カンタン・デュジャルダン&オリヴィエ・ケル・オゥリオ、“セレンディピティ”を探す航海
ベルギー出身のギター奏者カンタン・デュジャルダン(Quentin Dujardin)と、レユニオン出身のハーモニカ奏者オリヴィエ・ケル・オゥリオ(Olivier Ker Ourio)によるデュオ作品『Serendipity』は、思いがけない偶然の幸運(=セレンディピティ)を求めて、2人きりで港から港へ、音楽の大海を旅するようなアルバムだ。
ベルギー出身のギター奏者カンタン・デュジャルダン(Quentin Dujardin)と、レユニオン出身のハーモニカ奏者オリヴィエ・ケル・オゥリオ(Olivier Ker Ourio)によるデュオ作品『Serendipity』は、思いがけない偶然の幸運(=セレンディピティ)を求めて、2人きりで港から港へ、音楽の大海を旅するようなアルバムだ。
西はヨーロッパや北アフリカ、東はインドまで、広大な音楽文化の地図をジャズの上で描き出すフランスのピアノトリオ、EYM Trioが新作『Casablanca』をリリースした。モロッコ最大の都市をタイトルに据えた今作はアラビア音楽の伝統を大胆に取り入れ、久々にゲストを迎えず、トリオの3人のみでオリジナリティに富む壮大な音世界を繰り広げる素晴らしい作品に仕上がっている。
Aka Moonを始めとした様々な革新的ジャズ・プロジェクトで知られるベルギーのドラマー/作曲家、ステファン・ギャラン(Stephane Galland)が多国籍セクステットによる新バンドを従えての新譜『Stéphane Galland & The Rhythm Hunters』をリリースした。アフリカのポリフォニックでトランス的なリズム、数学的複雑さを備えたインドのリズム、不規則に脈動するバルカンのリズムといったように、彼がこれまでに様々なアーティストと共演したりする中で経験してきた世界各地のリズムを持ち帰り、自身の語彙になるまで咀嚼し理解を深め、インスピレーションを得て創作に落とし込んできた結果が凝縮された新鮮な音楽が展開される。
ベネズエラ出身でパリを拠点に活動する新進気鋭のギタリスト/作曲家ガウド(GAüD)が、デビュー作『Looking for Home』で秘めた才気を爆発させている。新型コロナのパンデミックによるロックダウン中に制作が開始されたこの作品は、フィリップ・ソワラ(Philippe Soirat, ds)やニコラス・フルーリー(Nicolas Fleury, b)そしてヤニック・ベノワ(Yannick Benoit)といったフランスの音楽家たちを迎えたバンドで録音され、とりわけガウドの好奇心旺盛な音楽性を巧みに引き出している。
パレスチナのクラリネット/ネイ奏者/作曲家モハメド・ナジェム(Mohamed Najem)の新作『Jaffa Blossom』がリリースされた。一般的なジャズ・ピアノトリオ編成に彼のアラブ音楽からの強い影響が窺えるクラリネットが溶け込み、地中海から中東の街並みや歴史の物語を感じさせる魅力的な音楽が展開される作品だ。
音楽界において“異端児”というのは、最高の褒め言葉だ。このモロッコ系フランス人のトランペッター、ダウド(daoud)は間違いなくこの言葉が当てはまるミュージシャンだ。なんの間違いか『GOOD BOY』と題されてしまった彼のデビュー作は、ジャズのなかにヒップホップ、R&Bやサイケロック、エレクトロニックが渾然と混ざり合い、この人物が只者ではなさそうだということがすぐに感じ取れる。
パリ生まれロンドン在住。家系はガンビア、セネガル、マリにルーツを持つというベーシスト/シンガーソングライター、アーミ・ガジャガ(Amy Gadiaga)のデビューEP『All Black Everything』が、UKジャズシーンに新星の到来を告げる。
フランスのシンガーソングライター/ハープ奏者ソフィー・ソリヴォー(Sophye Soliveau)のソロデビュー作『INITIATION』が圧巻だ。まずは(2)「Initiation II - Wonder Why」を聴いてみてほしい。タイトだが主張のないリズムセクションの上で、幾分慎ましやかに分散コードを爪弾くハープ。鳥肌立つほど多層にも重なる女性コーラス。そして何よりも耳を惹くのは、これがデビュー作とは思えない経験値を感じさせるソフィー・ソリヴォーその人のあまりに素晴らしいヴォーカルだ。
グアドループ出身のドラムス奏者アーノウ・ドルメン(Arnaud Dolmen)と、ブラジル出身でグアドループに移り住んだピアニスト、レオナルド・モンタナ(Leonardo Montana)によるデュオ・アルバム『LéNo』がリリースされた。ピアノとドラムスのデュオ編成だが、カリブ海のクレオール・ジャズのグルーヴが渦巻き、グウォカの洗礼を受けたユニークなドラミングとピアノ、そして2人のコーラスが有機的に絡み合う演奏は圧巻。一般的に想像される“ジャズ”とはまた違った世界の、唯一無二の音楽体験を与えてくれる絶品となっている。
フランスのバンド、ムッシュ・マラー(Monsieur MÂLÂ)は2021年から2022年にかけてリリースした2枚のEPと、奔放で熱いライヴでフランスのインディー・シーンで確実に存在感を高めてきた。この5人組の音楽にはファンク、ジャズ、ソウル、アフロビート、サンバ、ロック、さらにはもっとプリミティヴな民族音楽など様々な要素があるが、それらジャンルのどれにも当てはまらない強烈な個性を持つ。
毎年5月に開催されるヨーロッパ最大の音楽コンテスト、ユーロビジョン・ソング・コンテスト。エントリー曲で個人的には好みに刺さる曲はほとんどないのが通例だが、今年はめちゃくちゃ面白いアーティストがいた。それが、今回紹介のアルメニア代表として出場するラダニヴァ(Ladaniva)だ。
2000年代以降、“エレクトロスウィング”のムーヴメントを牽引してきたフランスのバンド、キャラヴァン・パレス(Caravan Palace)待望の新譜だ。2019年の前作『Chronologic』から5年の時を経てリリースされた『Gangbusters Melody Club』は、所謂王道のエレクトロスウィングと、前作で提示して見せたそれに留まらない彼らの新機軸が融合。丁寧に作り込まれたサウンドで新旧のファンに訴求する仕上がりとなっている。
2015年にブラジル系フランス人たちによって結成された旅とともにあるバンド、チャオ・ラルー(Čao Laru)。彼らは新作『Minas』で、自身たちのルーツであるブラジル音楽により深く潜り込んだ。街角クラブ(Clube da Esquina)からグラヴェオーラ(Graveola)までミナス・ジェライスの音楽をこよなく愛する彼らは、ブラジルから多くのゲスト・ミュージシャンを彼らの“コンビ”に招き、4枚目のアルバムを完成させた。
並外れたジャズピアニストであり、カリブ海のクレオール文化の伝道師でもあるグレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)。現代ジャズのシーンにおいても唯一無二の存在感を発揮する彼の新作『Phoenix』は、彼の音楽的創造性の集大成であり、おそらくはキャリアハイの作品なのではないだろうか。