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ヴォーカル

  • 2025-10-17
  • 2025-10-17

ミナス、ノルデスチ、ビートルズ、ジャズ、そして室内楽にスーパームーンの魔法を塗した驚異的傑作『Luar Total』

ブラジル・ミナスジェライス州のシンガーソングライター、アレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andrés)が待望の新作『Luar Total』をリリースした。ブラジルのポピュラー音楽史に燦然と輝く名盤『Macaxeira Fields』(2012年)を彷彿させる歌を中心としたアルバムで、彼の持ち味であるビートルズ、ブラジル伝統音楽、ジャズ、室内楽といった要素が非常に高いレベルで混ざり合う、間違いのない傑作に仕上がっている。スタジオ収録のフルアルバムとしては2019年リリースの前作『Rã』から6年ぶりということもあり、待ち望んでいたファンも多いだろう。

  • 2025-10-11
  • 2025-10-05

ギンガ直系ギター&トロンボーンの素敵すぎる夫婦デュオ、Natalie Cressman & Ian Faquini 新作

サンフランシスコを拠点に活動する夫婦デュオ、ナタリー・クレスマン&イアン・ファキーニ(Natalie Cressman & Ian Faquini)の新作アルバム『Revolução』が届いた。“革命”や“革新”を意味するタイトルの4枚目のデュオ作だが、その音楽自体はいつも通り穏やかで、分断と混乱の進む社会への静かな抵抗の表れのようだ。

  • 2025-10-01
  • 2025-09-30

知られざるリオの鬼才チアゴ・アムーヂ。カエターノやシコも参加する必聴新譜『Enseada perdida』

ブラジル・リオデジャネイロのSSW、チアゴ・アムーヂ(Thiago Amud)の2025年の新作『Enseada perdida』制作のきっかけは、ゼカ・ヴェローゾ(Zeca Veloso)からの情報だったという。チアゴは彼から、彼の父親で世界的に著名なMPBのレジェンドであるカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)がチアゴの曲「Cantiga de ninar o mar」を、そして同じくレジェンド、シコ・ブアルキ(Chico Buarque)が「Cidade possessa」をレコーディングするのだと聞いた。これをきっかけに、チアゴは既存の楽曲に新たなアレンジを施し、カエターノやシコも参加するアルバムとしてまとめ上げた。

  • 2025-09-29
  • 2025-09-27

イタリア発。南米経由のソウル/ファンクバンド、Alèri 鮮烈なデビュー作『Quasi Dipinto』

イタリア北部、ベルガモ出身のSSWヴァレーリオ・ティントーリ(Valerio Tintori)が率いる大世帯バンド、アレリ(Alèri)のデビュー作『Quasi Dipinto』が素晴らしい。ソウル、ファンク、ジャズ、MPB(Música Popular Brasileira)などをミックスし、イタリア語の抗い難いグルーヴを塗した力強いサウンドが特徴で、様々な文化の出会いを原動力とした魅惑の音楽を奏でる。

  • 2025-09-27
  • 2025-09-21

新世代の日常の憂いと不安、そして活力を端的に表現する人気女性デュオ Anavitória 新譜

ブラジルの人気女性デュオ、アナヴィトーリア(Anavitória)が6枚目となるアルバム『claraboia』をリリースした。日常の何気ないワンショットのようなジャケット写真が象徴するように、過剰な飾りを必要としない、温かく素敵な歌たちに彩られた作品となっている。

  • 2025-09-20
  • 2025-09-19

禅の精神と呼応する夫婦デュオ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバト 魂の安寧を導く新作

あのうんざりするような商業主義があらゆる音楽を食い尽くそうとする時代にあって、ブラジル・ミナスの夫婦デュオであるヘナート・モタ(Renato Motha)とパトリシア・ロバト(Patricia Lobato)は、もう20年以上のあいだ、商業主義からもっとも遠いところで彼らの興味の赴くままにナチュラルに純真に音楽による表現を重ねてきた。2025年の新作『Qualquer coisa natural』でも、彼らはなにも変わらず、ただ純粋に詩やギターや歌を通じて豊かに生きることの悦びを表している。

  • 2025-09-05
  • 2025-09-05

共産趣味とバルカン音楽/ヒップホップの謎融合! フランスの人気デュオ Soviet Suprem『Made in China』

ソビエト連邦が冷戦に勝利した世界線、という設定で社会風刺と皮肉に満ちた歌を歌うフランスのバルカン・ヒップホップ・ユニット、ソヴィエ・シュプレム(Soviet Suprem)。政治的メッセージを伝えつつも直接的な政治的立場を曖昧にする彼らの音楽は共産主義、資本主義、グローバル化、権力構造、ウォーキズムなど多様なテーマを扱うが、これらを真剣に擁護または批判するのではなく、誇張とユーモアで皮肉るスタイルを常に貫いていてきた。これまでも多方面から怒られそうな作品で物議を醸してきた彼らの3枚目のアルバムとなる『Made in China』は、その名の通り古来よりアジアの覇者として世界に影響を及ぼす中国やその周辺国へのある種の“ラブレター”だ。

  • 2025-08-24
  • 2025-08-24

時代を超える普遍的な傑作。レイヴェイ、待望の3rdアルバム『A Matter of Time』

2ndアルバムである前作『Bewitched』(2023年)がグラミー賞を受賞し、まだわずか5年程度の活動期間ながら一気に世界的なスタートなったレイヴェイ(Laufey)が、待望の新譜『A Matter of Time』をリリースした。現代のポップカルチャーと、レトロでノスタルジックな音楽を高いレベルで融合した唯一無二の存在であるレイヴェイの魅力と存在感を一段と際立たせる作品として広く注目を集め、おそらくは想像以上の再生回数の数字をもって彼女のスター性をあらためて証明するだろう。

  • 2025-08-17
  • 2025-08-17

カテゴライズ不能な多文化共生バンド、ラゴン・ンワール。果てなき可能性が開花したデビュー作

2023年にフランスで結成され、“カテゴライズ不可能”と評される独特の音楽性が魅力の4人組、ラゴン・ンワール(Lagon Nwar)のデビュー・アルバム『Lagon Nwar』が面白い。バンド名はフランス語で「黒いラグーン」を意味し、これは異なる文化的背景が交錯する“中間地点”を象徴。メンバーそれぞれのルーツ(フランス海外県レユニオン、ブルキナファソの首都ワガドゥグー、そしてフランス国内のパリ、オルレアン)の交差を表現している。

  • 2025-08-13
  • 2025-08-12

価値観を変えうる衝撃的音楽体験…! ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル『Vari』ライヴ盤

当サイト『ムジカテーハ』では普段はあまりライヴ盤は紹介しないのだけど、何度か繰り返し聴いているうちに、その特別さをスルーするわけにはいかなくなってきてしまいました。ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)の『Vari』から厳選された7曲を収録したライヴ盤。後頭部をハンマーで打たれるような強い衝撃を受ける、驚くべき作品です。

  • 2025-08-10
  • 2025-08-09

すべての難民や戦争の犠牲者に捧ぐ。中東出身男女デュオ、Kazdoura のデビュー作『Ghoyoum』

カナダ・トロントを拠点に活動する男女デュオ、カズドゥーラ(Kazdoura)のデビュー作『Ghoyoum』。内戦のため祖国を離れたシリア出身の歌手レーン・ハモ(Leen Hamo)と、レバノン出身で移民としてカナダに渡っていたマルチ器楽奏者ジョン・アブー・シャクラ(John Abou Chacra)は、2020年のベイルート港爆発事故後のトロントでの募金活動の中で出会い、強力な相乗効果を証明する音楽作品を作り上げた。

  • 2025-08-07
  • 2025-08-07

ポスト・ボサノヴァの本流。ブラジル先住民族出身の女性SSWタイナー、注目の新作『Âmbar』

ブラジル北部パラー州の先住民族の家系出身のシンガーソングライター、タイナー(Tainá)の2作目となるアルバム『Âmbar』。ボサノヴァを基調とした柔らかなリズム、愛情、孤独、郷愁、憧れ、欲望といった誰もが抱く普遍的な感情をありのままに表現する自然で巧みなソングライティング、そして飾らない美しさを湛えた歌声と、ブラジルの豊かな音楽文化を象徴しつつも幅広いリスナーに訴求できる親しみやすい要素を兼ね備えた傑作だ。

  • 2025-08-06
  • 2025-08-06

言語を超越するモザンビーク出身SSWレナ・バウレ、伝統と未来を結ぶ深淵な傑作『Kumlango』

モザンビーク出身の歌手/作曲家/芸術活動家レナ・バウレ(Lenna Bahule)の新作『Kumlango』は、モザンビークやアフリカ南部の伝統音楽に由来する打楽器などによる優れたリズムに、効果的なエレクトロニック、そして広い音域を持つ彼女の柔らかく美しい声が融合するサウンドスケープが印象的な素晴らしいアルバムだ。国際的なミュージシャンも複数参加し、モザンビークを代表する芸術家として知られつつある彼女の活躍の舞台を世界に広げる。