- 2025-03-15
- 2025-03-15
パリのメトロから世界へ。誇り高き南仏の社会派ミクスチャーバンド、Zoufris Maracas 達観の新譜
フランスの社会派ミクスチャーバンド、ズーフリ・マラカス(Zoufris Maracas)の4枚目のスタジオ・アルバム『La course folle』。アルバムはコロンビアとフランスで録音され、アフロキューバン、カーボベルデ、マヌーシュジャズなど多様な音楽的要素を取り込み、日常の葛藤や自由への渇望をユーモラスかつ鋭い表現で歌っている。
フランスの社会派ミクスチャーバンド、ズーフリ・マラカス(Zoufris Maracas)の4枚目のスタジオ・アルバム『La course folle』。アルバムはコロンビアとフランスで録音され、アフロキューバン、カーボベルデ、マヌーシュジャズなど多様な音楽的要素を取り込み、日常の葛藤や自由への渇望をユーモラスかつ鋭い表現で歌っている。
台湾原住民であるパイワン族出身のシンガーソングライター、タイ・シャオチュン(戴曉君, Sauljaljui)『VAIVAIK 尋走』。アルバム名はパイワン語で「旅立つこと」を意味し、彼女の音楽的探求と自己発見の旅を象徴するアルバムで、パイワン族の伝統音楽と世界各地のリズムや楽器を巧みに交えた洗練されたサウンドの中に、どこか懐かしい感覚を想起させる優れた作品だ。
イスラエル・テルアビブを拠点とする6人編成のバンド、シャテライツ(Şatellites)が2ndアルバム『Aylar』をリリースした。今作は2021年リリースのデビューアルバム『Şatellites』で確立した70年代のアナトリアン・ロックに強い影響を受けた独創的なスタイルをさらに発展させた作品となっており、西洋音楽には見られない独特の音階や不穏に渦巻くサイケデリックなグルーヴが面白い作品だ。
ガーナの“フラフラ・ゴスペル・クイーン”として注目される歌手フローレンス・アドーニ(Florence Adooni)による国際シーンにおけるデビュー作『A.O.E.I.U. (An Ordinary Exercise In Unity)』。伝統と革新の絶妙なバランス、力強いヴォーカルと洗練されたプロダクション、そして“団結”という普遍的なメッセージによって多くのリスナーに強いインパクトを残す作品となっている。
ブラジル・リオデジャネイロから、また新たな狂才が現れた。リオ郊外のバイシャーダ・フルミネンセで育った1998年生まれのSSW、カシュトリーニョ(Caxtrinho)のデビューアルバム『Queda Livre』。サンバやカンドンブレといったブラジルの伝統を確かに受け継ぎながらも、それらの原型をほとんど留めないほどに弄り回し、強烈なファズの効いたギター、ドラッグに塗れたジャズを大鍋にぶち込んで掻き混ぜたような凄まじい音楽だ。
コロンビア出身のギタリスト/シンガーのマリア・クリスティーナ・プラタ(María Cristina Plata)の新作『Casi Te Creo』は、声とギターを中心とした深みのある抒情が美しい南米音楽作品だ。全10曲のアルバムには彼女のオリジナルと中南米スペイン語圏の音楽家たちのカヴァーがバランスよく収録され、彼女自身によるギターと声を中心とした感性豊かなアコースティック音楽を堪能できる。
ブラジル・サンパウロ出身のSSWト・ブランヂリオーニ(Tó Brandileone)の待望の新譜『Reações Adversas / Ao Persistirem os Sintomas』がリリースされた。アルバムは11曲収録で、アヴァン・ロック寄りの前半『Reações Adversas』と、洗練された美しいメロディーがつづく後半『Ao Persistirem os Sintomas』の二部構成となっており(それぞれEPとして2025年1月に相次いで個別にリリースされている)、全体として豊かな彼の才能から溢れ出るさまざまな音楽的景色を楽しむことができる素晴らしい作品に仕上がっている。
イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。
モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)がビル・エヴァンス(Bill Evans)のトリオをバックに、アメリカのスタンダードやスウェーデンの伝統歌を歌った『Waltz For Debby』(1964年)というアルバムを愛するジャズファンは多いだろう。幼い頃からジャズに親しみ、ジャズとともに育ったアイスランド生まれのピアニスト/歌手アンナ・グレタ(Anna Gréta)もまた、その魔法の虜になり、それを自身の音楽的指針としてきたひとりだった。
フランスからは度々、高度な音楽性とキャッチーでキュートな魅力を兼ね備えたヒロイン歌手が現れるが、彼女もまたそうした存在になるかもしれない。シンガーソングライターのルイーザ(Luiza)のデビューEP『Fantastik』は、そう思わせるに充分な傑作だった。フレンチポップ、ヒップホップ、ロマ音楽、ブラジリアン・ポップ、ジャズ、レゲエ、エレクトロニックといった要素を独自の感性で巧みに組み合わせ、甘さ、切なさ、懐かしさといった感情を呼び覚ます歌にはすでに大物の貫禄すら漂わせる。7曲入りのEPという扱いだが、デビュー作でこの完成度は衝撃的だ。
南アフリカ・プレトリア生まれの作曲家/シンガー、ロリサン・セシェレ(Rorisang Sechele)が初のアルバム『The Seed』で華々しいデビューを飾った。彼女のプロジェクト「In Full Bloom」は花(とりわけ、蘭)のライフサイクルの各段階にインスピレーションを得ており、歌詞と音で自己発見の本質を捉えている。そのプロジェクト発の最初のリリースである本作では、成長の最初期の段階についての考察を、ジャズ、ソウル、R&Bを巧みに融合したサウンドで美しい物語に仕立て上げた。
アルメニア系フランス人ピアニスト/歌手/作曲家のマシャ・ガリビアン(Macha Gharibian)が、新作『Phenomenal Women』をリリースした。今作は、米国の偉大な詩人/歌手マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou, 1928 - 2014)の1987年ロンドンでのスピーチ/パフォーマンスにマシャ・ガリビアンが大きな感銘を受けたことがクリエイティヴなエネルギーの源となっている。タイトルの“驚異的な女性たち”はまさにそのスピーチの中に登場した言葉で、この偉大な女性を讃え、女性たちの戦い──女性が耐え忍ばなければならない暴力、そして性差別や平等に対する戦い──への彼女なりの強い信念を表明している。
予測不能な奇妙なポップネスが炸裂する話題作!米国ニューヨーク出身のマルチ奏者ザック・フィリップス(Zach Phillips)と、ベルギー・ブリュッセル出身のシンガー、マ・クレマン(Ma Clément)によるオルタナ・ジャズポップ・ユニット、ファイベル・イズ・グローク(Fievel Is Glauque)による2024年作『Rong Weicknes』。そのオリジナリティは新鮮で突き抜けており、キャッチーでアーティスティックなセンスに脱帽。
あらためて、アントニオ・カルロス・ジョビンは史上最高の作曲家だったと思う。彼がこの世を去って久しいが、遺された作品のあまりに洗練されたコードとメロディー、そして詩情豊かな歌詞──その多くはヴィニシウス・ヂ・モライスの才能によるものだが──による奇跡的な音楽は、今も多くの人々を惹きつけてやまないし、その“新しさ”は決して古臭くなることがない。