多彩なゲストを迎えたポスト・ボッサ注目作。デリア・フィシェール『Beyond Bossa』

Delia Fischer: Beyond Bossa

デリア・フィシェール、英語で歌う新作『Beyond Bossa』

ブラジルのSSW/ピアニスト、デリア・フィシェール(Delia Fischer)の新作『Delia Fischer: Beyond Bossa』は、その名のとおりアントニオ・カルロス・ジョビンを参照するボサノヴァの雰囲気を残した良質な音楽だ。

彼女がポルトガル語で書いた詩はすべてピアニスト/作曲家/ライターのアレン・モリソン(Allen Morrison)によって英語詞となり、デリア・フィシェールやその他多彩なゲストによって英語で歌われている。アルバムのタイトルから窺い知れるようにサウンドは“ポスト・ボッサ”で、ジャズ寄りのふくよかなハーモニーが特徴的だが、その一方でメロディー自体にはフォーク・ミュージックのような素朴さもあり、万人にとって馴染みやすいサウンドに仕上がった作品となっている。

アルバムで特に耳を惹く(2)「Song of Self Affirmation」はチリ出身の男性SSWマティアス・コレア(Matias Correa)との共演で、キャッチーで美しいメロディーと、日常の中での自己肯定に関する歌詞が共感を呼ぶ。

多彩なゲストにも注目したい。
(4)「Almost Paradise」のルシアーナ・ソウザ(Luciana Souza)、(6)「My Time」のグレッチェン・パーラト(Gretchen Parlato)、(11)「Workaholic」のマルコス・ヴァーリ(Marcos Valle)などは特筆すべき共演者だ。

自伝的な佳曲(7)「The Street Where I Was Born」

Delia Fischer & Ricardo Bacelar 略歴

デリア・フィシェール(Delia Fischer)は1964年リオデジャネイロ生まれ。
1988年にクラウヂオ・ダウエルスベルグ(Claudio Dauelsberg)とのピアノデュオ「Duo Fenix」を結成し、ビレリ・ラグレーン(Biréli Lagrène)をゲストに迎え話題となった『Karai-Etê』など何枚かのアルバムをリリースした後、1999年にエグベルト・ジスモンチ主宰のレーベル、カルモ(Carmo)から初のソロ作『Antonio』をリリース。その後はクラシックを礎としたジャズ・ピアニストとして築き上げてきた自身のキャリアに魅力的な“歌手”という肩書きも付け加え、活動を続けてきた。

2011年には師ともいえるエグベルト・ジスモンチ曲集『Saudacoes Egberto』をリリース。さらに2013年から2016年にかけて上演されたミルトン・ナシメントの膨大な楽曲群を演劇の観点から捉え直したミュージカル『Nada Será Como Antes』では、楽曲のアレンジや鍵盤演奏、演者を担当した。

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